僕とお姉様〜第一歩〜-4
「いいの?」
「これくらい平気ですよ」
「山田、いい奴〜」
調子のいい事を言って僕の空いてる左腕にその華奢な腕を絡める。
「…重いんだけど」
これは密着された事への照れ隠し。
結局名前すら語らないお姉様にグイグイ引っ張られながら今の自分の状態を考えた。
ひばりちゃんを好きな気持ちは暫くどうする事もできないだろう。父さんと今まで通り接していくのも正直言って自信がない。
できるだけ二人の事を考えたくない僕にとって、非常識な行動力で頭の中をひっかき回して現実を忘れさせてくれるこのお姉様に実はほんのちょっと感謝していた。
何より、僕と出会って良かったと言ってくれた。
単純だけどその一言だけで昨日死ななくて良かったと思えたんだ。
だからこの人との出会いはきっと特別な…
「荷物ありがと」
「へっ!?」
気がつくと、そこは駐車場。
愛車らしき赤い軽自動車にさっさと荷物を積み込み自分も運転席に乗り込む。
「じゃ、先に行くね」
「はっ!?自分だけ車?」
「だって山田は自転車があるでしょ?早くしないとパパとママが待ってるかもよ〜」
「パパママ言うな!」
「あははっ、キレてる。じゃあねー」
ひらひらと手を振って本当に一人で行きやがった。
前言撤回!!!!
誰が感謝するか!何が特別だ!!
年上だろうが年下だろうが僕は女なんか絶対信用しねぇっ!!!!
僕が全力で自転車を漕いでいる頃、家では父さんとひばりちゃんと早くも到着したお姉様の三人が重苦しい空気の中で僕の帰りを待っていた。
できれば避けて通りたかった『家族会議』をする為に―…