恋人達の悩み8 〜文化祭〜-6
「ん……」
仕上げに入るべく、美弥は指の動きを速めた。
「んぁ……ああっ……!っあ、ん、ん……!」
声を漏らさないよう歯を食いしばりながら、一気に達する。
しばらくの間、室内には美弥の荒い呼吸だけが響いた。
呼吸が落ち着くと、美弥はため息をつく。
どうにも空しく、物足りない。
恋しい人のぬくもりを傍に感じながら性の悦びを味わえたのなら、どんなに満足できる事か。
「あ〜あ……」
人知れず、美弥はため息をつく……。
さて、それより時間を遡る。
龍之介は、自分を慰めていた。
美弥を抱けない事で欲求不満が溜まり、下半身がしつこくそれを表明するせいである。
「は……っ!」
鋭い息を吐き、龍之介は自身を扱くスピードを緩めた。
求める度に組み敷いた肢体の事は、微に入り細を穿ち覚えている。
体から放たれるあえかな香りも触れる度に心地いい滑らかな肌も、何もかもだ。
部屋中に溢れる切ない鳴き声のこだまが今更聞こえる気がして、龍之介は耳をさする。
上になったり下になったり密着したり離れたりと、様々な体位で鳴いている美弥の無防備な体と蕩けた表情。
自分を優しく包み込んでいる温かい箇所の絶妙な収縮が生み出す、極上の快楽。
「あ〜……」
自分の体に跨がって体を上下に揺すっている美弥を思い出し、龍之介は呻いた。
腰をくねらせている恋人が眼前で揺らしている膨らみに触れたり吸い付いたりすると、びくっと震えては切ない顔で動きを止める。
その顔が堪らなくて、龍之介は上に乗っている美弥へついついちょっかいを出してしまうのだ。
そして美弥もそれに応え、可愛い声を溢れさせる。
「……はぁ」
無意識のうちに恋人の体の線を撫でるように手を動かしながら、龍之介はため息をついた。
あの細い腰を掴んで勃起を奥深くまで沈み込ませ、緩急と強弱を付けてお腹の中を掻き回して美弥を鳴かせたい。
もちろんそれだけではなく、両の乳房を揉みしだいたりとろとろの淫部を味わったりもしたい。
とにかく、体中に触れたいのである。
二年も抱き続けている体なのに全く飽きない……いや、抱き続けているからこそ愛着と執着のある、恋人の肉体。
「あ〜……」
記憶の中の美弥を細部に至るまで思い出しつつ、龍之介は再び自身を扱き始めた。
今度はイくまで、躊躇う事なく。
時が過ぎ……文化祭、当日。
「あーほらほらっ!」
「はい、メイク終わりっ!」
「腹きつっ!」
「だからダイエットしとけって言ったでしょっ!?」
ファッションショーの準備に追われ、目隠しのカーテンを巡らせた教室内は戦場と化していた。
そんな中、瀬里奈は下着姿のヘアメイクを済ませた美弥の顔に細工を……もとい、化粧を施している。
出番が最後で比較的余裕がある上に三年連続で出場するためか進行の勝手が分かり、なおかつ秀でたメイクテクニックを持つ瀬里奈は、色々と重宝されていた。
「はい終了っ。次の人、カモンッ!」
美弥のメイクを終えた瀬里奈は、順番待ちをしていた女の子に声をかける。
「は〜い」
美弥が席をどくと、女の子はそこに陣取った。