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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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恋人達の悩み8 〜文化祭〜-3

 数日後。
 美弥は笹沢家を訪れ、瀬里奈から化粧の手ほどきを受けていた。
「ふ〜ん、認めて貰ったの」
 専用鋏で美弥の眉を整えながら、瀬里奈は首をかしげる。
 普段から化粧をしない美弥の顔は、グッドコンディションを維持するためにかなりのケアをしていた。
 化粧をしないという事は、顔のバッドコンディションもそのまま出てしまうからである。
 そこに瀬里奈は感心しつつ、美弥の眉を整えていた。
「いや、あんたらのラブラブぶりは感心を通り越して呆れたくなるわね」
 そう言って、肩をすくめる。
「そうかなぁ……」
 おとなしく眉をカットされながら、美弥はそう呟いた。
「そうよ。ま、一生の間にそこまで想える相手と出会える事なんて、とても珍しいんじゃない?」
 カットを終えた瀬里奈は、ブラシで眉を一掃きする。
 そして下地クリームを手に取り、美弥の顔へ塗り込み始めた。
「瀬里奈だってこ……高遠君と、うまくいってるじゃない。もうそろそろ、一年でしょ?」
「そしてあんたらは二年になるのね。口開けないで、指突っ込みたくないわ」
 下地クリームを塗り終えた瀬里奈はおそろしくたくさんアイテムの詰まったメイクボックスから、ファンデーションを何種類か取り出す。
「ん〜……あんたの肌色には、これね」
 コンパクトを開けるとパフを取り出し、瀬里奈はファンデーションを塗り始めた。
「宇月からドレス見せて貰ったけど、ありゃかなり後半の出番よね」
「そういう瀬里奈は、一番最後でしょ」
 思わず、美弥は言い返す。
 美少女コンテストを兼任してはいるが、本来の目的はファッションショーだ。
 後半になればなる程衣装もモデルも豪華になるというシステムに則り、最後には去年の優勝者もしくは昨年度の準優勝、そうでなければ手芸部員が選ぶ本命が立つ。
 そして瀬里奈は今まで、二年連続でファイナルを飾っていた。
 そして曲がりなりにもファッションショーと付くからには、一番最後に披露される衣装はただ一つ。
 部員全員の努力と部費の結晶、ウエディングドレスである。
「何で私程度の顔が、後半に登場しなきゃならないのよぉ……」
 ぶつくさこぼす美弥を見て、瀬里奈は笑った。
 確かに美弥の顔は、自分クラスの物凄い美人とは言えない。
 だが可愛い部類に入る顔立ちには優しい顔付きがプラスされ、そこに明るく柔らかい表情がかぶさるので、割と魅力度が高いのである。
 年齢性別に関係なく好かれる、とてもお得な顔とでも表現すべきか。
 整い過ぎているが故に男からはちやほやされるが女からは嫌悪を向けられやすい瀬里奈には、それが少し羨ましい。


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