オマケ付き参考書〜恋愛上手は国語を制す?4-3
それから何時間過ぎたのだろう。
森本は起き上がりため息を吐いた。
キャサリンに報告しなきゃ。
怒るだろうなぁ。
それでも話したい。
この気持ちを聞いてほしいんだ。
と急いでお約束のお茶せんべいセットを用意してからデッキにセットした。
画面が映し出される。
毎回この登場場面が一番緊張するひと時だ。
「はぁ〜い!森ちゃん。
アラ?元気ないじゃなぁい?」
陽気なキャサリンも森本の異変に気が付いた。
今夜は何故かナース服を着用している。
「今から行くわね〜」
とまたしても際どい体勢でのブラウン管からのご登場。
森本は苦しそうに笑った。
「どしたのォ?もしかしてフラれちゃった?」
やれやれと自分の髪を撫でながら尋ねた。
森本は何も言わない。
しびれを切らしてキャサリンは言う。
諭すように。
「そんな簡単に諦めちゃうなら好きになる資格ないわ!」
ようやく重い口を開いた森本。
「僕なんかやっぱダメですよ…何も取り柄ないし、グズでよわむしだから。」
キャサリンは何も言わずに立ち上がり厳しい口調でこう言った。
「いい?恋は闘いなの!
勝つか負けるか奪うか諦めるかなの!闘う前から諦めちゃったらアナタは一生こんな感じのままヨ!」
睨みつけるキャサリンに圧倒されて森本は呟く。
「…朝田二朗………」
誰それ?
とキャサリンは聞き返す。
こんなに表情を変えるナースがいたら患者も困ってしまうだろう。
事情は話した。
今日の弱気な自分自身の1日を。
キャサリンは笑った。
「そう…あの娘の今日のキーワードが一つ見つかったわネ!その朝なんとかってヤツのこともっと調べなさい!
国語と同じヨ。森ちゃんのイメージ力でいいワ。集めた情報とイメージを併せて今の彼女の状況を考えてみなさい。そこに鍵はあるから。」
とニッコリほほえんだ。
こんな厳しいキャサリンは初めてだった。
森本は嬉しさからか悔しさからか涙が零れた。
キャサリンに悟られないようにそっと拭いてみる。
「ばかねぇ。泣かないの!男の子でしょ?」
と森本の髪を優しく撫でてくれた。
誰かに触れられるのは久しぶりだった。
それが余計大粒の涙を誘った。
キャサリンは森本にとって頼れるお姉さん的存在だ。
涙が乾く前に時間は容赦なく尽きてキャサリンは心配そうに帰っていった。
「明日は笑顔でがんばるのヨ〜!」
とブラウン管から手だけ出してブイサイン。
森本もそれを返す。
恋は闘い……
森本の闘いはまだまだ終わらない。
眠れない夜は更けていった。