かっちゃん-1
私は忘れない
確かに輝いてたあの人を…
【かっちゃん】
私は中学の時、陸上部に入っていた
とても楽しかった
みんなは言うんだけどね
ただ走るだけの部活のどこが楽しいの?って
いや、違うんだよ
あの頃の私にとってはね
そのただ走るだけの部活がすべてだったんだから
色んな思いがあったんだから…
三年になって間もない頃、私は足を骨折した。正直骨折なんて初めてだったから、松葉杖で歩くのは少し楽しみだった。
まぁ実際はこんなに大変だとは思わなかったな…。
骨折している間、私はみんなのタイムをひたすら計ってた。マネージャーみたいなことしか出来なかったからさ…。
副部長に八積勝志って子がいてね。みんなは『かっちゃん』って呼んでいたんだけどね。彼は身長が私よりも低いの。ちょっとチビだった。だけど走ってる時のかっちゃんは最高だった。
走り終わった後、息を切らしながら手を膝に置いてゼェゼェ言いながら
「…タイム…どがん…やった?」
って聞いてくるの。そして私が彼のタイムを教えたら
「そう…サンキューな。」
って一言いってスタスタ水道の所まで歩いていく。私もヒマだったからかっちゃんをよく観察してたんだろなぁ。
教室にいる時は教科書を枕にしてよく寝てるんだ。
あぁ、彼は部活人間なんだなって思ってた
だけど、明日の部活は休みってコーチが言った時は、飛ぶようにして喜ぶ。そして、自由参加の日には絶対に来ない。多分、彼は人生をおもいっきり楽しんでいたんだろうなぁ…。