手紙〜心閉ざしたダチへ〜-2
いつもMは冷たい目をしていた。性格もちょっと冷たい性格だった。
今でも覚えているのは、どうでもいいような日の話…
小学校に入ってからの俺は少しずつ明るくなっていってた。だから明るい話が好きで、帰り道にそんな明るいっつーか普通な話をMにしていた。
だけどアイツの反応はすごく冷たくて
「あっそう。よかったね、おめでとう。」
と、こんな感じだった。大体はいつもこんな感じだけど、俺はしつこく話していた。
あと、小2になってからのことだけど、アイツはある日、俺に
「単純やね」
って言った。その頃の俺は『単純』って言葉の意味が知らずに単純って何?ってMに聞いた。だけど、教えてくれなかった。なんだかんだいって純粋な少年だった俺は、家に帰ったらすぐに辞書を開いて『単純』の意味を調べた。そして<簡単なこと>と勘違いをしてしまい、次の日にその事をMに言ったら
「は?違うんだけど」
って言われた。「だったら何?」って聞いてみたんだけど、アイツは結局それを教えてくれなかった。だから俺は自分の単純さに気付かなかった。
そうそう。それと、昔俺はゲームボーイしか持ってなくてさ、持ってたソフトもマイナーなヤツばっかだった。その中で唯一面白かったのが『桃太郎伝説外伝』だった。俺はソレにハマってからは毎日のようにMにその話をしていた。そしたら、さすがのMも気になったみたいで、
「それ、貸して。」
って言ってきた。俺はあのMが頼みごとを…!!と思い、喜んでOKしたのだが、その日、違う友達にウチに来て、Mに貸す約束を忘れてたせいか、貸してしまった。貸した後Mとの約束に気付いて、しまったと思ったが、なんとかなるだろうと思って、やっぱ返してとは言わなかった。次の日、Mは俺の席まで来て、
「持ってきた?」
と言った。ヤバッ!!と思った俺は、オドオドしながら事実を話した。ここから先が当時の俺にとってはスゴく意外だった。なんとあのMの目から静かに涙がこぼれたんだ。アイツはそのまま黙って去ったが、担任がソレを見つけて、
「オイ!誰が泣かしたんだ!!」
と怒鳴った。俺は自分が悪いことを幼いながらも理解していたので、自首しようと思って席を立った。だが、アイツは
「壁に頭ぶつけただけです。なんでもありません」
って、俺をかばってきた。今なら、アイツがあの時泣いたのは、ゲームを借りれなかったからじゃなくて、俺が裏切ったから泣いたんだなぁとよく分かる。
そもそもアイツの冷たい性格は、ドロドロな家庭が生み出したものだったから。