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死神の心
【ファンタジー 恋愛小説】

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死神の心-2

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 三ヵ月後。
人を殺すのは、どう考えても慣れないが、それなりにちゃんとやってきたところだ。
絢芽は、三ヵ月前に会った死神の所へ呼び出されていた。
「…連絡がある。落ち着いて聞け」
「…何でしょうか?」
黒いスーツを纏い、おとなびた絢芽に、昔の面影はなかった。
「お前の大事な人、高生が死んだ」
「……は?」
「手違いではない。運命だ」
自然と涙が出てくる。
「そ…そうですか…っ…」
死神になってから、人の死は理解してきたつもりだ。運命、だと言われれば、どうしようもない。自分の管轄外なだけ、幸せと思ったほうがマシだ。
「…では、失礼しました」
ガチャ…とドアをを閉め、今日も仕事に出掛ける。
白いメモ帳を取り出し、生涯を終えた順に×マークをつけていく。
「ふぅ……、天国でもお元気で…」
仕事を終え、今日、死んだ者に対して言う。これが絢芽の毎日の日課になっていた。


■■■


「明日は…」
 白いメモ帳の次のページを開き、明日、死ぬはずの者を見る。
自分のような人を出さないために、事前の下見は怠らないつもりだ。
「佐伯澪…高坂哉貴…」
次々と名前と顔を確認していく。次は…とメモ帳を見た時、絢芽は我が目を疑った。
「綾瀬孝紀…」
見た目は、死んだ高生そっくりだった。
 名前も同じ。
思わず高生は死んではいないのではないか?と絢芽は思った。それと同時に、絢芽にある感情が芽生えた。
―殺したくない。
―出来ることなら、また一緒に居たい。
―出来なかったことを、たくさんしたい。
だけどそれは、人間としてでの恋ではなく、死神としてでの恋。
それでさえ、孝紀という存在は絢芽を突き動かしていた。
「…殺さない…」
そう決心した絢芽は、孝紀を運命から逃すべく動き出した。


■■■


自室ですやすやと寝ている孝紀を見つけると、絢芽は孝紀の夢の中に入り込んだ。
「明日、あなたは死ぬので、覚悟しといてください」
「……は?」
 旨を伝えると、当然の如く、孝紀は当たり前の反応を示した。説明してる暇は無い。急がなければバレてしまう。
「ではでは、また明日、死に際で会いましょう」
「ちょっ…」
そう言って絢芽は、姿を消した。


 自室に戻ると、思わず溜め息が出た。やってしまった。死神として最大の禁忌を。
後戻りは出来ない。その後悔と同時に、人を助けられる喜びというのも、絢芽は感じていた。
明日が、死神としての最終日。そして明日が、死神でも人間でも無くなる日。そう思うと、なぜか変な気持ちになった。
「…はは。…あははは…」
胸が、きゅんと締め付けられた。


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