きっと、そう−二人の行方-4
「悠哉でいいよ。」
色んな思いを頭の中で泳がせていた癒芽に聞こえてきた。
「いい・・・の?」
「当たり前じゃん。名字好きじゃないし。」
苦笑いして言う。
あとから、「特に嫌いな理由ないんだけどね。」と付け足す。
「悠哉・・・君。私も、癒芽でいいよ。」
「呼び捨てでいいのに。」そう笑いながら、適当な紙に『悠哉』と書いていく。男の子とは思えない、少し薄めの綺麗な字。
「『ゆめ』は?」
悠哉は紙と先程まで自分の名前を書いていたペンを渡してきた。
癒芽は、それを手に取り緊張して震えている手がばれないようにサラサラっと書いた。
「綺麗な字。癒すに芽か。普通にこっちかと思った。」
『癒芽』と書かれた隣に『夢』と書いていく。
「こっちの方が可愛いね。」
そういって、『癒芽』の方に丸印をつけた。
画数が多いだけで面倒臭いと思っていた自分の名前を、こんなに好きになったのは初めてだ。
思わず恥ずかしくなって赤面していくのがわかる。
「じゃあ、集まったようなので始めます。」
いつの間にか決まった実行委員長が前にでてきたので、二人とも前を向きなおした。
まだ心臓の音は早いまま。隣には、愛しい人。
こんなにも近くにぃる、私は今日どれだけ幸せなんだろう。
人任せなクラスでよかった。
これからも喋れるといいな。
今回は、代表や各仕事などの説明を受けただけで終わった。
ガタガタと椅子から立ち上がる音が教室中に響く。
癒芽も立ち上がり帰ろうとすると、
「癒ー芽!」
呼ぶ声がした。
誰が呼んだかなんてわかってる。
けど、顔が見たくて。
わざと振り向く。
そこには、やっぱり癒芽の想い人。