find out memory-1
クリスマスもお正月も冬休みもあっという間に過ぎてしまって、2年生で過ごす時間もあとわずかになってしまった。まぁクラス替えはない予定だから3年になってもあまり変わらないと言えば変わらないのだが、俺らも就職やら進学やらで忙しくなってくるから、2年生の時間はかなり貴重になってくる。その中で終業式の前で一番のイベントがある2月。
「やっぱり寒い」
2月になってもまだ消えない雪の中を俺は歩いていた。天気はまだ良いが雪は溶けるわけもなく、まだまだ春は遠そうだ。
いつもどうり通学路を歩いていると遠くから声が聞こえてきた。
「おーい、おーい」
後ろかあら追いかけてくる声、うるさいのが来た、と思いながら振り返る。
「オッハー」
「古っ」
[うるせー]
追いかけてきたのは案の定、蓮だ。イベントの日になるといつもの2,3倍うるさいし痛い子になる。
「にしても、いっつも遅刻寸前な蓮が今日は珍しく早いな」
「あったり前!今日は一年に1度のイベント、バレンタインデーだし。朝から気合入れなきゃな」
「どれだけ気合入れたってもらえる量は決まってんだよ蓮くん」
「いや、そんな事はないっ!気合入れた俺がいつもより光って見えて、『ああっ素敵だわ・・』とかいう展開がないとは限らない」
なに考えてんだコイツは。
「ないとは限らないが、その展開がある確立は0.1%にも満たないな」
「いや、俺は0.1%でも今日はやってやるぜ。ってことで歩、先行くな」
そう言って蓮は学校への道をほぼ全速力で走っていた。なんで俺はあんな馬鹿と付き合っているのかよくわからん。
蓮とは違い、俺はゆっくりと学校へ向かった。
俺はバレンタインデーがあまり好きではない。気にくわない理由は女子からもらった物はほぼ100%受け取らなければいけないという事と、一ヵ月後のホワイトデーのお返しをするのがすごく面倒くさい事。女子が好きでやってるんだから、返さなくていいと思っているのは絶対俺だけではないはずだ。何時だか織華にもらった時には明らかに5倍以上のチョコレートをお返しに買わされ、俺が財布を持つ意味が無くなった事もある。
そして今実際に教室への廊下を歩いていても必ず視界に写ってしまう2人組、ドアの前に固まるな、邪魔くさい。
そんな感じでやっとクラスに着いた俺はなんか机の上で無駄なポーズをとっている蓮を無視して机に座る。クラスでは男子も女子もモノの見事に半分になって騒いでいる。しかし、珍しくまだ織華の姿は見えなかった。いつもなら必ず俺より先に来ていたのに。