月光が導く未来 第1章-2
妖魔の核は妖魔の魔力を帯ている為か、装飾用、マジックアイテム等の需要が多く、普通の宝石より、高値で取引きされていた。
狩りは満月の夜だけだが、狩りに成功すれば大金が手に入る。
妖魔ハンターとして、生計を立てる者も少なくない。
そして、アリアもその内の一人だった。
「収穫もあった事だしっ今夜はもう、帰るかっ」
機嫌が良い為か、アリアは鼻唄を歌いながら妖魔の核を懐にしまい、剣を鞘に収めてその場を立ち去ろうとする。
ボトリ…
アリアの耳元をかすめた音。
そして肩への衝撃。
肩にいきなり何かが落下してきたのだ。
何だろうかと何気無く肩に手をやるとヌルリ、とした感触。
慌てて視線を肩に向けると…。
「うわ…っ?!何なんだっコレはっ!!」
夜の森にアリアの絶叫が響いた。
アリアの肩には先程の妖魔と同じアメーバ状の妖魔がベッタリと、へばりついていたのだ。
アリアはとっさに妖魔を掴み取り地面に叩きつける。
地面に叩きつけられてもなお、ウゾウゾと動いている妖魔。
即座に抜いた剣で妖魔を突き刺す。
「ハァハァ…気配なんてまったくしなかったのに…何で?」
霧になっていく妖魔を見ながら、ゆっくり呼吸を整える。
いつも通り、妖魔の核だけが地面に残される。
「コレが落ちて来たのって…」
妖怪の核を拾い上げるとアリアは、妖魔が落ちてきたと思われる木に視線を移す。
キラキラッ
木々の遥か高い所から見える光輝く無数の光。
「なっ?!まさかっ!」
アリアのその一言が合図だったかの様に、色とりどりの核の光を持つ妖魔達が一斉にアリア目掛けて落下してくる。
その数、およそ30。
ボト…ッボトボトッ!!
「う゛わーっ!!ウソだろっ?!」
半ばパニック状態でアリアは剣を振り回す。
剣が妖魔に当たる度に、妖魔の核の宝石が地面にパラパラと散らばっていく。
だが、いくら敵が低級妖魔とて、落ちてくる全ての妖魔の始末を出来る訳では無い。
仕留め損ねた妖魔がアリアの足元に群がり、そして…
「うわ…っ妖魔が服の中に入ったっ?!」
一瞬、アリアの動きが鈍る。
「うくっ?!…ひぁっ…や…っ?!」
妖魔はアリアの体を伝って首まで這い上がってくる。
そして首にヌラリと巻き付くとゆっくりと首を絞めていく…。
「ぐぅっ…息が…っ!」
苦痛に顔を歪めつつも、掻きむしる様に首に巻き付いた妖魔を取ろうとする。
意識が落ちるのも時間の問題かと思った時、不意に首を絞める力が弱められる。
スッ…と妖魔が首から離れていく。