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月光が導く未来
【ファンタジー 官能小説】

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月光が導く未来 第1章-1

雲が掛り、月はおろか星すら見えない夜。
木が鬱蒼と生い茂る森の中に一人の少女がいた。
その名は、アリア。

アリアは静かに剣を構えある一点を睨んでいる。
だが、夜の闇が支配するこの場所では何がいるのか今は見えない。

だが、姿が見えなくとも気配がする。
視線の先にアレがいる。
ソレを、察知したアリアは動かない。
今、動くのは危険だと本能が告げている。

ソレは忌まわしきモノ
人とは相容れないモノ

それを自覚する度に段々と鼓動が早くなる…。
ゴクリ…緊張の面持ちでアリアは、唾を飲み込んだ。
不意に強い風が吹く。
木々が揺れ、夜空を覆う雲が、風と共に流れていく。
不意の明るさにふと、アリアが雲が消えた夜空に目をやればその明るさは満月の光。
満月の柔らかな光が夜の闇を包み込み、アリアと闇に隠れていたモノをゆっくりと照らしていく。

月光が照らす、アリアの姿。
剣を構え獲物を睨む意思の強い瞳。
強気な微笑み。
速さ重視の軽装備。
長い黒髪を風が揺らす。

そして、月光が照らすもう一方の姿。
アリアの視線の先にいたのは人間ではなかった。
口も目もない。人の形すらしていない。異形のモノ。

ソレは、妖魔。

形状は様々だが、共通するのは体が半透明で体の中に光り輝く核があり、満月の夜のみ森に現れ人を襲う事。

そんな妖魔が、アリアから4、5m離れた所でグニョグニョと形も定まらずに動いている。
そんな妖魔を見てアリアはニヤリと笑う。

「今夜の獲物はアメーバか…妖魔の中じゃ最下級妖魔だけど…まあ、贅沢も言ってられないか」

カチャリ…

剣の柄を握る手に一層力を入れて、アリアは妖魔に向かい勢い良く走って行く。

3m…2m…どんどん縮まる距離。
だが、剣を振るう時にはまだ早い。
妖魔との距離が十分に縮まった時を見計らって月をバックに、アリアは構えた剣を妖魔目掛けて振り下ろした。

「やぁあっ!!」
バシュッ!!

アリアの振り下ろした剣が、妖魔の体を二つに断ち切る。
断ち切られた妖魔は、シューッと音を立てて霧となり消えていった。

妖魔が存在していた所にキラリと光る輝き一つ。

消滅した妖魔の体から唯一、残ったモノ。
それは、妖魔の核。

アリアはソレを拾い上げて満月の光にかざしてみる。
赤く輝く石が、月の光に照らされる。

「今回の妖魔の収穫は…ルビーだなっ」
妖魔の核、それは宝石で出来ている。

どういう原理で妖魔が発生するのかは未だ謎だが、古くからの伝承では、石には魂が宿る。
人々の悪意や悪い記憶が満月の不思議な力によって石に封じ込められ、妖魔となるのだと言い伝えられてきたのだ。


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