<凄艶な刃>-4
「うぁ…ッ…あぁ…しゅ…秀介…ッ!」
抵抗する理由のなくなった身体は、初心月の蒼い光に照らされた素肌は妖しい色香を放ち、激しく煽られる度に艶やかな反応を示す。
「あぁ…んっ…秀介…ッ…イイ…もっと…ねぇ…ぁ…もっと」
俺はもっと…もっと……と何度も繰り返す。
足りない…こんなんじゃ足りないんだよ、秀介。
今まで嫌われたくない一心で、自分の感情を封印してしまっていた。
好きになって欲しいなんて言わない。
ただ嫌いになって欲しくなかっただけだった…
だけど、その感情をぶち撒けてしまった以上、俺は秀介を求めずにはいられなかった。
愛されないのなら、せめてその律動で、この報われない愛を癒して欲しい
もっと激しく突き上げて、もっと激しく貪って欲しい。
そして、全てを俺の中に吐き出せ。
秀介の全てを受け止めることが出来るのは、きっと俺だけ…俺だから…
そんな風に、秀介の突き上げに夢中になっていた俺は、彼の不審な立ち振る舞いに全く気付かなかった。
「ヒィッ!…うわぁ…あぁ!」
そして、突然感じた痛みに、本能的に叫び声を上げていた。
恐る恐る見下ろした己の胸元に見えたのは、無機質なステンレスの刃。
肩から胸に沿ってゆっくりと降りてゆく、その鋭利な刃物が今まさに、俺の皮膚を引き裂いている。
すると、薄い胸板をスルスルと伝う刃が作り出した一本の長い線からは、赤い珠が幾つも現れ、ハラハラと肌を伝って落ちていく。
その深紅の液体は、俺と秀介を繋いでいる場所へと到達すればジンワリとそこを包み込むように広がって、最後は俺が吐き出した熱い液体と交わりながらパタパタと床に落ちてゆく。
網膜に飛び込んできたそんな映像と肌で感じるその感触に、何故か恐怖は感じられず、変わりに立ち込めたのは、一気に高まる吐精感。
血液の匂いとその命の色は、俺を最大限に興奮させていた。
俺はクツクツと咽を鳴らして笑う。
そうだよ秀介、君にはこのくらいの事しか出来ない
君がどんなに俺の肌の浅い部分を傷つけて、強姦染みたことをやってみせても、それは哀れな虚勢にしか映らない。
皮膚の表面についた傷なんて、時が経てばキレイに消えてなくなるんだ。
もしも痕が残ったとしても、それは俺にとっては愛しい人の残り香を身に纏っているようなもの。
本当に俺を傷つけたいのなら、もっと残酷で鬼畜な方法がある筈だ。
その刃には、胸を突けば心臓を、脇腹を突けば肺を、一気に突き破る位の威力はあるはずだ。
だけど…だけどね、秀介…
おまえにそれは出来ないよ
そんな鬼畜な行為を行うには…
おまえは少し優しすぎた…
俺は秀介の肩に手を回し抱き寄せ、その珠のような汗を湛えた首筋に唇を寄せてそっとキスをする。
何を感じたのか、秀介の身体はビクッと大きく反応し、その後何度も首を左右に振り、再び激しく揺さぶりをかけはじめる。
何かを紛らわすように…何かを掻き消すように……
秀介がそうして俺の中を深く抉れば抉るほど、俺は激しく嬌声を上げ、快感に身を焦がす。
高まりと共に上昇する体温…それに連動してドクドクと胸から吹き上がる血液…
その生暖かい滑りが、擦れ合う下肢に伝わり二人を限界へと誘っていく。