ふたり【あかね2・15】-3
……まさか……そのコートの下は……
『あかね……! ダメだ! そんなこと……』
心の叫びが虚しく頭の中に響いた。
遊輝は後に、「この時間が人生で3番目にゆっくりと流れた」と語った。
―…
「どぅしたの?お兄ちゃん。」
あかねはボタンを半分外すと上半身を出し、まるで着ぐるみから抜けるようにコートを脱いだ。
その下にはきっちり寝間着が着込まれていた。
「いや、……なんでもない…」
ガッカリ……
─いやいや!!
今の心の声はなんだ!?
違――う!! 俺はそんなことで落胆などしな――い!!
…よし、今のは男性読者の声ということにしておこう!
「ふぅ〜ん。。。ま、いいや。」
あかねはそう言って髪をいじる。
遊輝は椅子の背もたれを脇にして、頬杖をつく。
「あかね……“よばい"ってどういう意味か知ってるのか?」
あかねは指を口に当てて「う〜ん」と考えるそぶりを見せる。
「えと、……夜中に…好きな人のトコに……遊びに行くコト……かな?」
あかねは、特別「好きな人」を強調したわけではないが、その言葉が聞こえた途端に遊輝は心臓を爆動させ、軽く意識を飛ばした。
「ねぇ〜、お兄ちゃ〜ん……違うの〜〜?」
「……――はっ!……いや、うんと……違くない!合ってるよそれで!」
…多分違うと思うけど、あかねがそう思っているならそっちの方が都合がいい。
「ねぇ、泊まっていいよね。」
「……うん。…こんな時間に女の子ひとりで外、歩かせられないからな。」
「やった〜〜♪」
あかねは小踊りする。
「あ、あんまり騒がないで。薫が起きちゃう」
「は〜〜い♪」
「こっ声も抑えて…」
「は〜〜ぃ……」
「あっ、チョコ美味しかった?」
あかねは机の上に置いてある空になった箱を見て言った。
「うん、すごく美味しかったよ」
俺とあかねはしばらく他愛もない話で盛り上がった。