ふたり【あかね2・15】-2
──カチャッ
キィ………
「……―〜〜!?」
そこに立っていたのは、全身を黒のコートに身を包んだ小さな少女………あかね。
目が合うとあかねは「にひっ」と笑った。
「──来ちゃった☆」
「〜〜あかね!?」
思わず叫んでしまった。
慌てて口を押さえてあかねに駆け寄る。
「とっ、とにかく入って! 薫にバレちゃまずい。」
「…うん♪」
あかねは布団にポスンと座った。
遊輝はそれを確認してドアを静かに閉めた。
振り返るとあかねはキョロキョロと部屋を見回している。
遊輝は机から椅子を引っ張り出し、布団の側に持っていって腰掛けた。
「すごいコートだな。…あや姉のだろ?」
遊輝が話しかけると、あかねは遊輝の顔を見て笑った。
「うん。お母さんの。…どう?あかねにピッタリでしょ♪」
「ははっ、…うん、ピッタリだよ。」
手先も足も、首から下のほとんどを黒のコートに覆われたあかねは、正直に可愛いと思った。
「エヘヘへ。」
屈託の無い笑顔。
……はっ!
いかんいかん、つい見とれてしまった…
全く、あかねの笑顔にはいつも引き込まれそうになる……
「あかね、……どうしてひとりで?……しかもこんな時間に…」
遊輝は出来る限りマジな顔で聞いた。
それでも若干、頬がゆるんでいる。
「え〜〜?どうしてって……」
そう言うとあかねはゆっくり立ち上がった。
「…、…、…」
あかねは声を出さず、口を小さく動かした。
「え……?」
聞き返すと、あかねはニッコリ笑って遊輝の側へ寄る。
そして少しかがんで遊輝の耳元に口を寄せた。
「よ・ば・い」
「!!!?」
遊輝は固まってしまった。
あかねの顔が耳元から離れるのを確認すると、あかねの方にぎこちなく首を回した。
目が合うと、あかねはおもむろにコートのボタンに手をかけた。
ひとつずつ、ゆっくり外していく。