オマケ付き参考書〜恋愛上手は国語を制す?〜2-1
「さぁレッスン始めるわヨ!」
キャサリンはやる気全開だ。
僕も思わず腕まくりした。
「ちょっと何処見てるの?」
気が付くと僕は谷間ばかりに目が行ってしまっていた。
正直目のやり場に困る。
「…っとその前におせんべいとアッツイお茶頂けるかしら?」
僕は急いで台所に行き、熱いお茶と残りモノのおせんべいを菓子鉢に入れて2階へと上がる。
お盆を持つ手が震えていた。
僕の部屋に女の子が来るなんて始めてだったから。
ドアを開くとキャサリンはくつろぎながら僕の雑誌を眺めていた。
「あらありがとう。
こういう本読むのネ〜。」
ほっといてくださいよ!と言いたかったが、お茶とせんべいを差し出して僕も腰を降ろした。
お茶を啜りながらキャサリンは言う。
「まずはイメージ力よ!」
と指を天井に向けた。
イメージ力?
なんで国語とイメージ力が繋がるのかがわからなかった?
「キミ好きな娘いるでしょ?彼女とうまくいくように想像したことある?」
僕は顔を赤らめながらうなづいた。
あくまでも妄想の世界であるが。
「じゃあ筋道たてて考えたことある?
今の状況がどんな感じで、どうすれば仲が進展するのかを?」
よくよく考えてみると僕のイメージは曖昧だった。
過程をスッ飛ばしてゴールしか考えたことがなかった。
どうしたらもっと自然に楽しい会話ができるのか考えたことなんてなかった。
せんべいを頬張りながらキャサリンは言う。
「国語も同じヨ。今読んでいる文章がどんな設定で登場人物がどういう状況に置かれているのか客観的に考えなくちゃダメ!」
と指を交差させてバツマークをつくるキャサリン。
とっても愛らしかった。
「まずはその憧れの彼女とキミの関係を把握することね。」
僕らはいたって接点も同じ予備校という事しかなかった。
しかも会話は時たま当たり障りのないものだけ。
彼女の趣味も思考も好きな映画すら知らなかった。
遠い関係。
何も知らないのにうまくいくイメージなんてできるはずがなかった。
落胆する僕を横目で見ながらキャサリンは立ち上がった。