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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第4話・何処より来たりし黒郵便》-5

◆◇◆◇◆◇◆◇

「御苦労様で御座います」

メールを送ってから数分後。暗がりから、一人の男が出現。疾風と同じく黒装束を着込んでおり、顔に嵌めた仮面の為、くぐもった声だった。それに疾風は大して驚くこともせず、軽く会釈した。

「確認致しました。謝礼となります」

気を失った男を片手で担ぎ上げると、懐から茶封筒を出して疾風に差し出す。

「どうも」

疾風は封筒を受け取った。中身は言うまでも無い。

「また…いずれ…」

溶ける様に男は暗闇に去っていった。

「さあ、帰るか」

頭のスイッチを切り、覆面を外した。

「んん〜ん!」

一度、大きく伸びをすると疾風は街の中へと紛れていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇

月が世界を照らす中、疾風がのんびりと夜気を感じながら家路についていた。
ポケッ〜した表情からは先程までの動きや、殺気は微塵も感じられない。

我が家が見えてきたと思った時、疾風は霞が家の前でキョロキョロと左右を見ているのに気付いた。

「あっ!兄貴!」

霞が疾風に気付き、駆け寄ってきた。

「何やってんだ?」

不審に思った疾風が尋ねる。

「ようやく帰ってきたか…」

疾風の問いに答えず、霞は、はぁ…と安堵の溜め息を吐いた。

「いいから早く!!」

無理やり疾風の腕を掴みズルズルと玄関まで引きずる。そして、早く開けろと目で催促。
よく事情が分からないまま疾風がドアを開いた。

ぶあッ…と家の中に溜め込まれていた殺気が溢れて疾風を襲う。

「な、何だ!?」

思わず、身構える疾風。恐る恐る入った中で、疾風が見たものは…

「楓…?」

楓が俯きながら、玄関で正座していた。

「私が帰ってきた時からずっとあんな調子。お陰で家の中が居心地悪くて…」


疾風の後ろで霞がうんざりとした口調でぼやいた。

「あ、あの〜…」
「遅かったではないか…」

楓は顔を上げた。口許は固く結ばれ、その目はじと〜っと疾風を睨んでいた。


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