わたしと幽霊 -花-(後)-6
歩きながら彼に話し掛ける。
「あ〜、でも今日は恥ずかしいとこ色々見られちゃったなぁ。
高谷さん、何やってんだコイツ、みたいな目ぇしてたし〜」
「…そうか?」
「ほら、あたしと和輝少年が一緒になって泣いちゃったとき…」
「ああ…あれな」
久しぶりに人前で泣いちゃって…いい歳して恥ずかしいよね。
しかも、第三者にはあたし一人が泣いてるように見えてるんだから…うわぁ。
改めて恥ずかしさが込み上げてくる。
「いやあれは…お前が幽体を殴ったからだ。反則だろ。…というか、ありえん」
ん………?
確かに言われてみれば。
そういえば、あの時は無意識だったけど…
和輝少年と、手を繋いで病院に向かったりもした。
あたし…幽霊が見えるだけじゃなくて、ひょっとして触れる??
「…なんだ、その妙な動きをした手は」
その…確かめさせてください。
「断る」
そして一気に前進速度を早める彼。
「あぁっ!少しだけだからっ!」
もちろん、あたしは走って追い掛ける。
あたしとは違う、遠い存在の――…
遥か向こう側の、眩しい黄昏が透けて見えそうな。
――その高い背中はそんな存在で。
「じゃあ、眼鏡だけっ!」
ああ…それでも。
いつごろかな――…
「あたしが…夢を見終わるのは…」
赤い空に溶け込んで消えた、小さな呟き。
暑くなってきた初夏の始まりに、流れるように過ぎてゆく――…
今日という日は、
そんな一日でした。