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『半透明の同居人』
【悲恋 恋愛小説】

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『半透明の同居人』-9

 その後、7時になりリカが僕の部屋を訪れた。荷物の量からして何日か泊まっていくようだ。
 「泊まるのか?」
 「そのつもりだけど・・・いけなかった?親にもそう話しておいたんだけど」
 少しルイのことが気になったが、断る理由が無かった。僕自身もリカと会う事が久しぶりであったし僕はリカを部屋に泊めることにした。
 リカが僕の部屋に泊まってから、3日たった。僕たちは会っていない日のこと話したり、将来のことを話したりした。でも、話していながら僕はルイのことが少し気がかりでいた。ルイはこの間どうしているのだろう。
 「じゃあ、帰るね」
 リカは荷物をまとめて僕の部屋を後にした。
 リカが部屋を後にして1時間。ルイはまだ戻ってこなかった。
 (ったく・・・半径10メートルだったよな?)
 僕の周りの10メートルの範囲でルイの姿を探した。ルイはすぐ見つかった。ルイは近所の細い裏地にいた。しゃがんで、野良猫をなでている。
 「ルイ・・・」
 僕はルイの傍に駆け寄った。
 「このコ、私が見えるみたい・・・このコも私と一緒ね。居場所がないの」
 ルイの目はとても寂しそうで、少し潤んでいた。
 「ルイ、ごめん・・・」
 「ううん。あなたのせいじゃない。これは私の問題。こんなんじゃ本当はいけないのだけれど」
 「ルイ。帰ろう」
 ルイは小さく頷いた。僕はルイの手を取るとそのまま手をつないでアパートまで帰った。
 ルイの手はやはりそこになにもないように、体温も感触もなかった。


 ルイはその後、リカが僕の部屋に泊まるたびに、姿を消すようになった。僕がそのことに触れても、ルイは「しょうがないから」と言うだけだった。
 9月に入り、ある日、僕の郵便受けには第一志望の会社の入社試験の結果を知らせる封筒が届いていた。
 「なにそれ?」
 ルイが僕が手に持っている大きめの封筒を覗き込んでいた。
 「僕の人生を左右するものだ」
 「?」
 ルイはわからないと言う表情をしたが、封筒に書いてある会社の名前に見覚えがあったようだ。それを見て封筒と僕の顔を交互に見ていた。
 僕は緊張しながら封筒の封を破いた。紙の文字を見たとき僕は飛び上がりたいほど嬉しかった。
 「やった!内定だよ!」
 「本当!?やったね!」
 僕は見事第一希望の会社の内定をもらうことが出来た。ルイも内定と書かれた紙をしげしげと眺めると何度も「すごいね」と言っては笑顔を作っていた。
 僕はすぐにリカに電話で内定の連絡を入れた。
 「やったね!!じゃあ、今日はお祝いだ。今夜カレー作りに行くから!」
 そう言って、電話は切れた。
 「彼女なんて?」
 ルイはさっきと同じような表情で僕に聞いてきた。
 「うん。おめでとうって。で、今夜カレー作りに来るって」
 「彼女来るんだ。じゃあ、今日もその前に私出てるね」
 ルイは今日はずっと笑顔でそう言った。でも、その笑顔の奥には寂しそうな顔があるのだと僕はなんとなくそう感じた。
 「そこまで、気を遣わなくてもいいんだぜ」
 「ううん。出てる」
 「そっか・・・わかった」
 彼女の態度には揺るぎはないようだった。自分が憑いてしまったことへの罪悪感なのか。それとも・・・いや、僕は深くは考えないようにした。


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