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『半透明の同居人』
【悲恋 恋愛小説】

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『半透明の同居人』-8

 「そっか〜そうだったな。お前ら仲良かったなそう言えば」
 「リクって、小学校1,2年の時に好きな子いなかったけ?」
 そう言ったのはシンヤだった。
 「えっ・・・そうだっけな。覚えてないけど」
 「いや、絶対そうだ。いたよ。昔、近所に住んでたような、そうでないような・・・。名前名なんていったかな?う〜ん、思い出せん」
 僕はその女の子の名前どころか顔も存在も思い出せなかった。実際にその女の子がいたのかどうかも怪しいものだ。シンヤが何か思い違いをしているのかもしれないし。ふと、ルイを見ると寂しげな笑顔で窓の外を眺めていた。今日はきれいな満月だった。
 シンヤの家から帰る途中でルイが寂しそうな顔をしていた理由を尋ねてみた。
 「さみしそう?違うよ。退屈だったの!」
 そうして、ルイは舌を見せると「今日は月がきれいだね」と言って僕の手を握ってきた。彼女の手の体温はそこに何もないかのように、何も感じなかった。ルイの手の感触も何もなかった。手をつないだのも実は幻で僕が勘違いしただけかもしれないが、ルイが生きていない存在であることを実感した。
 濃い夏の空気がルイの栗色の髪と胸元のネックレスを揺らしていた。


 僕は実家での短い夏休みを退屈せずに過ごすことが出来た。友達とも何回も遊んだこともあるが、それ以外でも、ルイが僕の母校を見たいと言ったり、退屈だからどこか連れて行ってと言ったり、中々忙しい休みを過ごすことになったからだ。
 僕は実家を後にして、また6時間かけてアパートに戻るのだった。
 「なんで、戻るの?授業があるの?」
 すっかり僕の実家に馴染んだルイが名残惜しそうにアパートへ戻る電車の車内で聞いてきた。
 「無いけど・・・なんだよ、そんなに僕のアパートに戻るのがいやなのか」
 「そうじゃないけど・・・あっ、そっかそっか」
 ルイは一人で納得している。何かバカにしたような、呆れた目も僕に投げているように見えた。
 「何?言いたいことがあるなら言えよ」
 「彼女でしょ」
 図星だった。実家を後にする三日前に僕はリカからメールがきていたのだ。僕もそろそろ彼女に会いたくなったのもまた事実としてあった。僕はルイに見透かされたようで少し腹が立ちそこからアパートに戻るまで、ルイと一言も口を利かなかった。
 僕のアパートの郵便受けには約一週間分の郵便物が溜まっていた。新聞は実家に帰る前に止めておいたのだが、それでも、ダイレクトメールやら、光熱費の明細などで溢れていた。アパートの室内に入るなりルイがいきなり口を開いた。
 「少しは掃除した方がいいんじゃない?」
 確かに、僕の6畳の生活スペースは散らかっていた。最近リカを呼んでいないこともある。それに、一週間ぶりの室内にはなんとなく嫌なにおいが篭っていた。
 「ねー、窓開けてよ」
 僕はカーテンと窓を開ける。しかし、田舎と違ってさほど綺麗な空気は流れ込んではこないようだったかそれでも少しはましになった。
 「こんな状態で彼女呼べるの?」
 「うるさいな。今から片付けるよ。ルイも手伝え!」
 「え〜!!自分の部屋でしょう。」
 ぶつぶつ言いながらも、ルイは手近なものを片付け始めた。そうして1時間ほどするとなんとか人が住む状態になった。
 「まあ、こんなとこかな」
 「いつもこうしてくれると助かるんだけどねぇ」
 ルイはなんだか母親のようなことを言っている。
 「彼女いつ来るの?」
 「今日は7時くらい」
 「ふーん。じゃあ、7時になったら私外行くね」
 「どうして?」
 「どうしてって・・・私がいると気が散るでしょ。色々と」
 ルイなりに気を遣っているのだろうか?その目は冗談ではなさそうだ。
 「大丈夫なのか?」
 一瞬ルイの目か悲しげに見えた。でもすぐ笑顔を僕見せた。
 「大丈夫。私幽霊だし」
 そう言うと、まだ7時までだいぶ時間があるのに、彼女は僕の部屋のドアをすり抜けて出て行った。


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