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『半透明の同居人』
【悲恋 恋愛小説】

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『半透明の同居人』-7

 「結構広いんだね」
 「そうか?」
 ルイは僕の部屋を目細めて眺めている。ルイの目線は僕の勉強机の本棚に移った。
 「あ、卒業アルバムだ。小学校、中学校、高校・・・全部あるね。向こうに持っていかなかったの」
 「僕は一人暮らしがしたくてね。地元が嫌いだったから。田舎で何にもないことが嫌だった。だから、出来るだけ引き離したかったから。そういや、ずっと見てなかったな」
 僕は本棚からその3冊を抜き取ると、ぼろぼろのテーブルで見始めた。
 「あ、いた。あんまり変わってないね。へー」
 アルバムの中には当たり前だが当時のままの僕がいた。世界はこの周辺しか知らなかったとき。そのときが僕にとって一番幸せで楽しかったのかもしれない。そうやって、懐かしんでると僕の携帯が鳴った。
 「ん?シンヤだ」
 シンヤは僕の幼馴染で地元の大学に通っている。
 「おおう。リク?帰ってる?」
 「うん。帰ってるよ。」
 「マジ?じゃあ、今日飲まない?宅飲みやけど」
 「いいよ」
 そうして、僕はシンヤと夜飲むことになった。
 「いいね。友達がたくさんいるみたい」
 「たくさんって、シンヤ一人と話しただけだぜ?」
 「でも、幽霊ってわかるんだ。第六感ってやつ?今日、そのシンヤ君以外にも何人か来るよ」
 そう言って、ルイは目の前でピースサインを作って見せた。
 「ルイは・・・」
 そう言って僕は言葉を飲み込んだ。「ルイに友達がいたのか」と聞こうと思ったけど、なんとなくこれまで、ルイの生前のことを聞くことに気が引けたからだった。
 「いや。なんでもない。そうだ、ここ見て・・」
 こうして僕とルイは飲みに出かけるまで、アルバムの写真や文集などで盛り上がった。
 午後8時。約束の時間になり、僕は飲み会会場であるシンヤの家に向った。シンヤの家と僕の家は徒歩で1,2分かなりの近距離。
 「近いんだね。納得。」
 隣で歩くルイは一人で納得している。
 「何が納得なんだ?」
 「ん〜あなたとシンヤ君が幼馴染ってことがね。これだけ近いとそりゃ納得だ」
 そう言っているうちにシンヤの家に着いた。
 シンヤの部屋にはルイが言ったとおり、中学時代の友達が4人来ていた。
 「お!全員そろったな。じゃあ、はじめようぜ」
 こうして、僕らの小さな同窓会が始まった。集まったメンバーは皆気心知れたやつばかりだった。こいつらとよく馬鹿なことしたり、馬鹿話をしたりしていた。さすがに、馬鹿なことをすることはなくなったが、馬鹿話は今でも、多分これからもずっとし続けることだろう。今日も馬鹿話を中心に宴会が盛り上がっていた。
 「リクは卒業したらどうするんだ」
 シンヤがグラスにビールを注ぎながら僕に聞いてくる。シンヤは酒に弱い。もう、随分顔が赤くなっている。
 「俺は就職する。って言ってもまだ内定もらってないけれど」
 「・・・友達の前では俺って言うんだ〜」
 ルイが扉に近くに座って微笑して言った。
 (しまった。嫌なとこ見られたな・・・)
 「あれ?リク。今付き合ってる大学のコと結婚するって言ってなかったか〜?」
 中学時代の部活仲間のシュンスケが言った。
 「就職が決まってからだけどな」
 「ひゅーい!結婚第一号か〜!飲め飲め〜!」
 ルイがどのような表情をしているか見ると少し寂しげな笑顔で僕らのやり取りを見ているようだった。
 それから、1時間が経ち、僕らはアルバムを開き出し、中学、高校時代に誰がかわいいと思っていたかを同時に指差して盛り上がっていた。それから、何故か各自の初恋の話に話題は移行した。
 「で、リクの初恋は誰ですか!?」
 完全に出来上がったシュンスケがマイクもないのに手を突き出して僕に振ってきた。
 「俺は、中2の時のサヤカちゃんだよ」
 周りから「おおお」と言うどよめきが出る。半ば予想した答えなのだろう。中学時代に僕とクラスメイトのサヤカと付き合っていたことは仲間内では有名なことだった。


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