おほしさま-3--2
〜〜〜
翌日。
「宏輔、今日は早く来たんだね」
まだ起きたばかりなのだろうか、眠たそうな顔をしている。
「早く…って、もう昼だぞ」
「え?あ…。なんかすごい身体が疲れてて…」
腕を揉みながらだるそうに答える。
…もう、弱まってきたのか。
また、熱いものが込み上げる。だが、泣いてはいけない。心配をかけてはいけない。
「宏輔ッ…?」
気が付けば、沙織を抱きしめていた。
強く。離れないように。
「…宏輔…苦しー…」
「あ?ゴメン…」
ちょっとだけ力を緩める。
すると、沙織が俺の胸元に顔を埋めた。
「宏輔、いい匂い…」
「ん、そうか?」
「このまま窒息死したいくらい…」
「なッ…!?」
「冗談だよ〜」
そういってパッと顔を離し、笑顔を見せる。俺が着ていた服の胸元に、…うっすら涙が滲んでいた。
「…明後日、星を見よう」
「…どうやって…?」
意外そうな顔をする沙織。
きっと、外出禁止だから無理だと思っているのだろう。
そこで俺は、昨日徹夜で考えたプランを打ち出した。
「明後日、俺が見舞いに行く。で、面接時間が終わったらいったん帰る。夜3時ぐらいになったらもう一回来る。そして、二人で星を見よう。明日は…準備とかあるから見舞いに来れないけど、明後日、必ず見よう。」
「…わかった。一日寂しいけど…大丈夫」
心配そうに沙織が言う。
こうなったら完璧に計画は成功させなくては。と、思わず力が入る。
「じゃあ…今日と明日分、ぎゅうッてして…」
「本当に好きだな…」
まぁ、俺も1番好きなんだけどな。
横になっている沙織を起こし、倒れないように後ろから抱きしめる。
始めての試み。
「宏輔…新バージョン?」
バカにしたように沙織が言う。
「ばッ…、後ろはイヤか?」
「うーうん。こっちもまた、安心するよ」
「今日はいつもの2倍の時間で行きたいと思います。」
「やたー♪」
喜ぶ沙織は、病気には見えないほど輝いていた。
でも知ってるんだぜ?もう足があまり動かなくなってることを。
でもそんなこと心配したら、お前、悲しむもんな。今は星を見せることに集中してやる。
そう思いながら、沙織を思い切り抱きしめた。