刃に心《第0話・ぷろろーぐの影》-2
「そっちは終わった?」
藍服に呼び掛けた。返答無し。見れば男の耳元で何やら呟いている…
黒服は近付き、耳をそばだてた。
「…お前は…私の奴隷……お前は…私の奴隷…」
禍々しい、カルト的な言葉。それを笑顔で呟く相方に、黒服は思わず眉間を指で揉み…
「…何をやってんのかなぁ?」
藍服の首根っこを掴み、引き剥がす。
「アハハ…あ、兄貴…ちょっと暗示を……」
「俺は再発防止の暗示をかけろとは言ったが、私兵を作れとは言ってないんだけど」
首根っこを掴む手に力を込めた。
「いいのか?母さんに報告するぞ?お前今月は金欠だって言ってたよな?」
「うッ…痛いところを…うぅ…分かったわよ!普通のかけりゃいいんでしょ!普通を!」
逆ギレかよ!と黒服は内心思ったが、眠いので突っ込むことはやめた。
しばらくして…
「はい、終わり」
藍服がぶっきらぼうに言った。
「帰るぞ。明日も学校あるんだし…ふあああ…」
大きな欠伸を一つすると夜の闇へと溶けていった。同じく藍服も闇へ中と消えていった…
◆◇◆◇◆◇◆◇
『う、う〜ん…』
『あれ?お前も寝てたのか?』
『やべッ…寝不足かな』
二人は先程の忍者達のことなど全く覚えてない様だった。
『まあ、後一つ書いて帰ろうぜ』
『そうだな』
そう言ってスプレー缶を構えた瞬間…
『『ぎぃやああぁぁああああああ』』
二人の絶叫が響き、やがて救急車の赤いランプが夜を照らし始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「なあ、どんな暗示をかけたんだ?」
夜の街の何処か。黒色忍者が藍色忍者に尋ねた。
「ん?ああ、スプレー缶を持って絵を書こうとすると…」
「すると?」
「目の前にマッチョなお兄さん達がこう…わらわらと…」
「………」
「しかも、裸で」
その光景を一瞬だけ思い浮かべた後、やっぱり戻ろうかと考えたが…
「…まあいっか」
自業自得だと思い、かなり遅い家路を急ぐ。
彼にとっては『悪戯犯の末路<己の睡眠時間』だった。
こうして、ある日の春の宵はこうして過ぎていった…
続く…