ぼくの学校を出るヒト V-1
「なんだか学園内が騒がしいみたいなんだが?」
高崎佳由季は続けた。
「俺は感じないが、嫌な感じがするとみんな訴えている。何が行われている?」
真琴はふぁーと欠伸を混じらせつつ、ゆっくりと体を起こした。
「侵入者よ。今、宮野とまいこちゃんを撃退に向かわせたわ。その侵入者が厄介なのよねぇ」
真琴は佳由季にしだれかかるように抱きついた。
「そんなことはどうでもいいじゃない。私の体で楽しんだ方がよっぽど有意義だとは思わない?」
佳由季は表情を変えない。
「お前は何も関わっていないのか?」
「今回は私はノータッチ。本当よ」
「前の一件で何も知らない振りしてたくせに、実は主犯だったんだ。信じられるとでも?」
「あん、ユキちゃんの意地悪」
真琴は佳由季の喉の下辺りに指を這わせのの字を書いた。
「かめはめ波!!」
右目の手から青白い光線が放たれる。
宮野は焦らず魔方陣を描き、光線を吸収。
「なんとも面白い能力だ。だが所詮は二番せんじ、我が高貴な魔術の前では無力だ」
無数の黒腕が右目に向かって伸びる。
右目の四肢を絡めとり拘束する。
「瞬間移動!!」
額に中指と人差し指をあてる。
右目の姿が消えた。
「意味がないと言っているのに、分からない奴だ」
宮野の背後に現れた右目。
そこにはもう黒い魔方陣が待ち受けていた。
「あなたは何をなさりに来たのですか?」
体育座りをしている青年に習い、まいこも隣で体育座りをしていた。
「……香炉が来たいと言ったから。僕はついて来ただけさ……」
「あなた方は何者ですの?」
青年は星が輝き始めた空を見上げた。
「……君は知っているかい? ……世界は八つあるんだ。《魔術師》 《妖精》 《剣精》 《科学者》 《不死人》 《天使》 《邪神》 そしてこの世界《無属》 ……それらが今、重なろうとしてるんだ。面白いだろう……」
「世界はそんなにもあるのですか? そういえば班長も似たような事を言っていましたわね」
まいこも宮野達から空へと目線を変えた。
「それで、世界が重なるとどうなるというのですか?」
「……どれか一つの世界が生き残る。……らしい」
青年はまいこに顔を向けた、血の気がなく生気もない。
「……君の質問には答えたよ……。次は……僕の質問に答えてもらえるかい?」
「ええ、わたくしに答えられる事でしたら」
「まいこ君はたのしそうだな、わたしもあちらの座談会に参加したいものだ。いささかこの物真似男の相手は飽きてきた」
「右目、何を遊んでいるのですか? わたくし少しばかりあなたを壊してしまいたい衝動にかられてしまいそうですわ」
香炉の冷ややかなまなざしに右目はゾクッとした。
小さな体とはうらはらに放たれる異質な殺気。
「ま、まかせてくれ。 とっておきを出しますから」
「なるほど今まで本気を出していなかったと言う訳か。私は君が全力で戦っているとばかり思っていたよ」
宮野はなんとも憎たらしい笑みを浮かべた。
「五月蠅い、俺をなめるなよ!!」