底無しトンネル物語U-3
「ひょっとしてブレーキが壊されている!?」
手の込んだことしやがって……
もう海は目の前だ。
「やばいぞ! ミサト起きろ! このままだと海に落ちちまう!」
だかミサトの反応はない。
ちくしょう!
すぐにミサトの手を引いてドアを開ける!
ちょうどその時、ゆっくりと車体が傾き始めた。
間近に迫る死を感じた時、僕はミサトの手をがっしりとつかんで車外へと飛び出していた。
風は吹き荒れて、雨雲は怖いくらいその大きさを蓄える。飛び降りた後、車は遙か下にあるテトラポットに当たり爆発した。
僕らは間一髪助かった。なんだか寿命が縮まった気がする……。爆発に気づいたのか磯山警部がパトカーに乗ってこちらへやってきた。
「おお、無事だったか!」
ええ、なんとかね。僕はそう呟いた。
「女の子はこちらで保護してすぐ病院に搬送する。」
警部はミサトの顔を見て言った、彼女はスヤスヤと寝息を立てている。
お前も来るか?と磯山警部は僕に言ったが、断った。今さら僕が病院に行っても何の役にもたてないと思ったからだ。
「おーいおーい!」遠くからタケルが走ってくる。
「それにしても、よくカメラの中に麻薬が入ってるってわかったな?」
警部は安堵した表情でそう尋ねた。
「はい。今日の夕方にタケル達の方のカメラを使った時に、妙な違和感があったんです。あとでそれは自分のカメラとの、重さの違いだったんだなってわかりましてね。同機種なのに不自然だなって感じて……まぁ中身が麻薬だとは到底わかりませんでしたよ」
ほほう、と警部は納得した。
タケルはようやく到着した。
「おい! どうなってんだよ? ミサトは病院行っちまうし、お前は警察に追われてるみてえじゃねえか。何か悪いことしたのかよ?」
「あはは……気にすんなよ。そんな事よりタケル、お前の自転車海に落ちちまったよ。すまなかったな」
僕は微笑して謝罪した。
「は? 何やってくれとんじゃ!」
タケルは埠頭の断崖から海を見渡す。
「心配すんなよ。ちゃんと弁償してやる」
「当たり前だよ! 馬鹿やろう! あれ高かっんだぞ!」
タケルは顔を真っ赤にして叫んだ。