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わたしと幽霊
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わたしと幽霊 -花-(前)-4

花束を持ち直し、横を見上げる。
歩道橋に背をもたせた彼は…人通りをぼんやりと観察していた。
あたしは座りながら、あたりをきょろきょろと見回す。
…あ、あそこにしよう。
あたしは、角の真ん前にある年季の入ったタバコ屋さんに目をつけた。
「…頭の打ちどころが悪かったか」
首をヒョコヒョコ振り回すあたしの様子に、しみじみと言う高谷さん。
「ひどっ!」
…正気だってば。



やがて落ち着いたあたしは、そのタバコ屋さんに行く。
「すいませ〜ん」
「おい……」
高谷さんの呆れた声。
「違う。それ誤解…」
タバコ買うんじゃないってば…そう弁解しようとした時、窓口がガラリと開く。
中から顔を出したのは、眠そうな顔したおばあさん。
よしっ。
「おやおや。おつかいじゃなきゃ、嬢ちゃんには売れないよ〜」
のんびりとした笑顔。
「あ、いえ…ちょっと聞きたいコトがあって」
「聞きたいことかい?」
あたしは頷く。
「うん。あそこの…あのT字路の角ね」
指差す。
「あそこで昔、男の子の事故があったと思うんです。知りませんか?」

「…そういう事か」
納得した声の高谷さん。
そう。長いこと店を開けてそうなこのタバコ屋さんならきっと何か知ってる。
そう思ったの。
余計なお節介を…なんて思ってるだろうな。

さっき、あの映像を通して…少しだけ彼の中を見て、分かったんだ。
――彼のこと。
よくない地縛霊かもだなんて…根拠もなく、見た目の印象だけで思ってしまって…
…ごめんね。

「男の子の…あぁ、和輝ちゃんの事かねぇ」
おばあさんは、悲しそうに微笑んだ。
「おまいさん、もしかして彩香ちゃんかい?幼なじみの。大きくなったねぇ」
んっと……。
「うん、そぅなの!ばぁちゃん久しぶり!」
咄嗟に口から出た嘘。
おばあさん、ごめんなさい!
「和輝ちゃんは…まだ目が覚めないって。11年になるよ。もう駄目なのかねぇ」

…11年も目が覚めない?
じゃあ、生きてる?
となると違う人…?

「ずっと八代病院だよ。あんたも会いに行ったげておくれ。きっと喜ぶだろうから」
「あ…はい」
おばあさんにお礼を言い、タバコ屋を後にしたあたしは、考え込みながら歩く。
八代病院は近い。
生きてるんだよね…
そしたら地縛霊にはならないはずだし…
でも気になる。

…となれば、ひとまず行動あるのみっ。
「行ってみるか」
やれやれといった様子で高谷さんが呟く。
「うんっ」

――そしてあたし達は八代病院へと向かった。


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