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わたしと幽霊
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わたしと幽霊 -花-(後)-1

――やがて八代病院へと辿り着いた。

(この映像だ…)
真っ白な病室に、シンプルな調度品。
窓から流れ込むそよ風に、ベージュ色のカーテンがはたはた…と揺れる。
さわやかな風を頬に受けながら――ドアが開いたままの病室をコッソリ覗き込んだ。
個室のベッドの前にも薄いカーテンが引いてある。

「失礼しま〜す…」
あたしは病室に入っていった。
「あらっ…どちら様?」
カーテン越しに誰かがいたので、あたしはびくっとする。
「あっ…ええと」
あたしは花束を抱え、そろっ…とカーテンの先を覗き込む。
大きくて真っ白なベッドに誰かが寝ていて――
その脇の小椅子に腰掛けた、20代前半くらいのお姉さんがこっちを見ていた。

「はじめまして」
「あっ、初めまして」
あたしはぺこりとお辞儀をして、
「あの…これ」
ガーベラの花束を差し出す。
「あら、ありがとう」
お姉さんはにっこりと微笑み、花束を受け取った。

別の目的のための花束だったけど…この場面だとこうなっちゃうよね。
また後で買いに行かなきゃ。

目の前の彼女は、真直ぐのロングヘアーを一つにまとめた、清潔そうな印象の眼差しをしていて。
あ…この人……
「彩香さん…ですか?」
あてずっぽうなのに、妙に確信があった。
「ええ、…あなたは?」
名前を言い当てられた事に、彼女は少しだけ驚きを浮かべる。
「昔、一度だけ会ったきりなんですけど…従妹の柚木っていいます」

あ゛ぁ…今日二回目の嘘。

しかしあたしの嘘にお姉さんは疑いの色も見せず、微笑み立ち上がった。
「柚木さんね。私以外の見舞い人なんて久しぶり。良かったわね、和輝」
和輝……
あたしは彼女の視線の先の、ベッドに横たわる人を見つめた。
そこに横たわり堅く目を閉ざしたままの――
彩香さんと同い年くらいの若い青年。
寝たきりとは思えないほど血色のいい顔色。
11年経ってるから、あの子なのかどうか見ただけじゃ全然分からない。

「彼と会ったのは何年ぶり?」
「え…えと、11年ぶりです」
「じゃあ、事故の直前だったのね。
11年ぶりだと別人のようでしょう?彼。成長だけは続いてるの」
彼女は、和輝さんの寝顔を見つめていた。
「今にも目を覚ましそうなくらい顔色いいのよ?」

彼女はおどけたように首を傾げ…笑ってるんだけど。
感じる。悲しい笑顔。

「彩香さんはよく来るんですか?」
あたしの質問に、一瞬だけ戸惑いを浮かべた…ような気がした。
「…幼なじみなの。いつ目を覚ますかと思って毎週来てるんだけどね。
昔、ちょっと喧嘩別れしちゃったから…言いそびれたことがあって」
そう言い、彼女は片目を瞑った。
ああ…素敵な笑い方をする人だなぁ、彩香さんって。

それに…このひと…

無言でじっと見つめるあたしから目を逸らし、
「お花、花瓶に入れてくるわね」
そして花束を持って、彼女は病室を出ていった。


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