秋葉原グラフティ-1
世界の電気街として名高い秋葉原。
西暦２１０６年。かつてオタク達がこの街に蔓延り青春を謳歌していた時代から１００年の月日が経ち、秋葉原の様相は大きな変貌をとげた……と思いきや、実際はあんまり変わっていなかった。
土日には相変わらずリュック（ポスターがはみ出している）を背負ったゲーム・アニメマニアがひしめき合っているし、メイドさんによるビラ配りも未だに健在である。
唯一、変わったとすれば科学技術の進歩によって今までのメイド喫茶が本格ロボメいド喫茶として新たに登場したことぐらいだ。
これもひとえに２１世紀後半に訪れた第５次科学革命の賜物である。
また近年、発明者とそのチームはロボメいドの量産化に成功し、大衆用お手伝いロボとして一般家庭から企業まで広く普及することとなった。
そして、今日も一体のロボメいドがとある企業に届けられる──
一台のトラックがビルに横付けて止まる。
「おい！ 新入り！ 早いとこ秋葉原グラフティー社様へ荷物をお届けしろ！」
「へーい！ ち、重い荷物は全部俺の役目だよ……」
宅配人はブツブツと文句を言いながら荷台から、人ほどもあろうデカいダンボールを台車に降ろす。
「うっ！ 重てえ！ 」ドシンッ！ と鈍い音を立てて勢い良く台車に落ちる。
「落としちまったけど大丈夫かな？ まあ割れ物注意ってステッカー貼ってないしオッケーか」
そのままゆっくりと会社内へと運ぶ。「ちわー！ お荷物お届けに参りました！ 判子お願いしやす！」
下品な髭をたくわえたスーツ姿の男が応答する「お、ようやく届いたか」
男はご苦労さまと言って押印に応じると、宅配人はそそくさと会社を後にした──
「ふふふ、長かった。起業して早１０年、ＯＬを雇う金もなく一人で会社を盛り立ててきたかいがあった……」
男は不適な笑いをして、急いでダンボールを開ける。
「さあ今日から君が我が社のＯＬだ！ いでよロボメいドー！」
いきおいよくビニールを破る。
そこには長い黒髪を持ち、白フリル付きの黒色のメイド服を着た少女が立っていた。
「きたー！ もえー！」男は奇声を発して今にもぶっ飛びそうな理性を必死に抑える。
「おっと……私がこの秋葉原グラフティ社の社長だ。甘い声で『社長』と言ってくれたまえ」ゴホンと一回咳払いした。
「あれれ？ もしもーし？」社長がいくら返事をしてもロボメいドの少女は動かない。
「あ！ そうか説明書見なきゃ」
社長は慌ててダンボールに入っている取扱い説明書を読む。
『?ロボメいドを起動させる時は、まず首筋にあるスイッチを一秒以上長押した後、起動！ と叫ぶ事によって電源が入ります』
社長はふむふむ、と頷く。
「首筋にあるスイッチを長押してと、よし起動！」
その瞬間！ 社内に閃光が走り！ 小さな竜巻がロボメいド周りを取り巻く！
社長がまぶしさに目を隠している間に、社内は平穏に戻っていった。