スター・ハント21・オーディション-1
時代の寵児・土本創児プロデュースによるオーディション
スター・ハント21!
4月29日(日) いよいよ最終審査
「これは、より刺激で、より根元的な実験。限界に挑戦するアイドル・プロジェクトだ!」(土本創児)
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「これは、期待以上の子が揃いましたね。」
「ああ、俺も正直、びっくりしてるよ。」
控え室で、今日のオーディションの審査員になっているレコード会社のディレクターから声をかけられた土本創児は、めずらしく興奮した様子で答えた。
今、この会場で開かれているのは、「時代の寵児」と呼ばれるプロデューサー土本の手で新たにデビューするアイドルを選ぶオーディションである。土本は「スター・ハント21」と銘打った今回の企画について、記者会見で「より刺激で、より根元的な実験。限界に挑戦するアイドル・プロジェクト」だと述べた。いやがうえにも注目が集まり、2000人を収容する会場は満員、テレビ・ラジオ、新聞・雑誌などあらゆるメディアが報道に詰めかけていた。
そして、最終予選に残った5人はいずれ劣らぬ美少女で、レベルの高い勝負になっている。
中でも、とにかく目立つのは、エントリーナンバー1番の火山朱美(かやまあけみ)だ。キリッとした美貌に加え、抜群のスタイルは、すぐにトップモデルの仲間入りができるほどだし、グラビアを飾るセクシーアイドルとして売り出すこともできそうだ。負けず嫌いで勝ち気な様子がうかがえ、芸能界の荒波を乗り越えることも容易だろう。
演技審査で群を抜いていたのは、2番の水沢汐理(みずさわしおり)である。清潔感を感じさせる知的な容姿は、17歳の今は少し硬い感じもするが、20歳台になれば、知性派女優やニュース番組のレポーターとして大ブレイクしそうな予感を感じさせる。プロフィールには進学校としても有名なお嬢様学校の名前が書かれていた。
すべての審査で観客の人気を独り占めしていたのが5番の風見清香(かざみさやか)だった。清楚で可憐、輝くような笑顔が周りのみんなを明るくする、そんな、まさにアイドルになるために生まれてきたような娘だ。しかも、休憩前の歌唱審査で、清香はとんでもない力量を見せつけた。他の娘が先輩アイドルのヒット曲を歌う中で、彼女はマライヤキャリーのバラードを選び、本物顔負けの歌唱力で審査員をうならせたのだった。
「ところで、審査もいよいよですね…」
ディレクターは、何か意味ありげな笑いを浮かべながら言った。
「そう、いよいよだ…」
土本が応じる。表情はいつもどおりクールだが、瞳の奥にギラギラと異様な光りがある。
「ここからは、当然、テレビ中継はシャットアウトですね…。」
「テレビだけじゃないさ。他のメディアも、報道の方法は工夫してもらわないとね。」
「ちょっと、恥ずかしいな…」
スタッフから渡されたビキニを着て、楽屋のドレッサーの前に立った清香は、少し頬を染めてつぶやいた。
水着審査では、全員が同じ白いビキニを着ることになっている。清香はビキニを着るのは初めてなのだ。
清香の隣では、汐理がビキニに着替え終えたところだった。
色白で、全体に華奢でほっそりした清楚な肢体をしている。
そして、その横では、火山朱美が鏡の前でポーズをとっていた。量感にみちた乳房、美しいカーブを描く腰まわり、よく発達した太腿、そして、膝から下の脚の線は官能的な優美さを持ち、ふと野性味さえ感じさせる。
「ワぁ、かっこいい…」
清香が思わず言うと、朱美はニッコリし、ウィンクして見せた。
「あなた、歌はすごく上手だったけど、水着審査は私がいただきよ!」
そして、水着審査が終わった。出場者たちは、それぞれの思いを胸にステージの中央に一列に並んだ。
やはり、一番決まっていたのは朱美だった。清香も、水着姿でポーズをとるのは少し恥ずかしかったが、がんばって、ちょっとだけセクシーなポーズもとってみた。朱実に負けないくらいの観客の歓声と声援がまた恥ずかしく、そして、ちょっと得意だった。
いよいよ審査も大詰め。正面に据えられたテレビカメラが緊張した面もちの彼女たちを撮影していた。ステージ中央にはカメラが捉えた映像を映し出す超特大スクリーンがあり、一列に並ぶ美少女たちを数倍に引き延ばして背景に映していた。おかげで、客席の最後列にいても、彼女たちの細かい表情の動きまでよく見える。
カメラが切り替わり、舞台の袖から登場する司会者を映し出した。「草柳しげる」という、今、バラエティ番組で引っ張りだこ若手コメディアンのホープだ。
「いやあ、みんな可愛かったね。最高だねぇ!」
そう言いながら、出場者たちと軽妙な会話を交わす。彼女たちをリラックスさせる一方で、これも実は審査の対象なのだが、こうした会話では、汐理がキラリと光る受け答えをして見せた。