大切なもの―初恋編―-1
恋をしました。初めての恋でした。
彼が大好きで、どうしても彼を独り占めしたかった…。
私、佐川 菜穂18歳 高校3年生
私は生まれつき心臓が悪い。20歳までは生きられないって言われてる。
辛くて苦しくて・・・・。そんな中彼に出会った。名前も知らない彼だけど、毎日電車で会える。
最初は会えるだけで嬉しかった。幸せだった。
話したことはないけど、彼が友達と楽しそうに話してるのを見てるだけでよかった。
2年間は親の送り迎えで3年生になった1学期の終わり近くに何とか電車通学を許してもらえたんだ。
そんな中で出会った彼。一目惚れだった。
夏休みが終わり、今日から新学期
また、彼に会える。
『おはよう。菜穂。元気だった?』
駅で明るく声をかけてきたのは親友の及川 梨紗 すっごく可愛くて、優しくて、誰からも好かれてる。
モデルのような体系なのに胸は大きいし、羨ましい。
梨紗はモテルんだ。一緒にいると引き立て役にしかならない私。梨紗くらい可愛かったら、彼と付き合えるかも・・・。
『おはよう。元気だったよ。体調も良かったし。』
『そっか。よかった。学校で無理しちゃダメだよ!』
ホームにはもう電車が来ていた。電車に乗り込み梨紗に好きな人が出来たことを報告する。
『菜穂もとうとう好きな人ができたんだ。応援するからね。』
優しい梨紗の笑顔に報告してよかったって思った。電車が次の駅に着く。今日も彼は乗って来るかな?なんて考えているとあっ。彼だ。今日も会えて良かった。梨紗に教えなきゃ。
『菜穂。あの』
『あっくん。こっち』梨紗が誰かに手を振っている。
あっくん?梨紗には1年の時からずっと好きな人がいる。電車で見かけた彼に一目惚れしたって教えてくれた。
あっくんと呼ばれた彼が電車に乗り込み梨紗に声をかけた・・・。
『おはよう。りい 』『あっくん。おはよう。友達の菜穂』
えっ・・・。どうして彼と梨紗が??もしかして梨紗の好きな人って・・・・・・・。
『初めまして。上野 敦史です。』
『初めまして。』そう言うのが精一杯だった。
上野 敦史君って言うのか。まじかで見る彼は背がたかくて、かっこよくて梨紗と並んでると美男美女で本当にお似合いだった・・・。
『あっくんと付き合ってるの。』恥ずかしそうに言う梨紗。
なんで??いつから???何で彼なの??
梨紗がずっと思いを抱いていたのは彼だったんだ・・・・。
『いつから付き合ってるの?』
『終業式の日にあっくんから告られたの。』幸せそうな笑顔が胸に焼きつく。
二人は電車の中で手を繋いでいた。その光景に胸はズキズキして、締め付けられる。
苦しい。やっと見つけた希望の光はたった数ヶ月で失ってしまった。
彼と付き合いたいなんて思ってなっかたけど、親友の彼氏なんて辛すぎる。
私の知らない人が彼女の方がよかったよ。
『菜穂??さっきから黙ってどうしたの?』梨紗の心配そうな顔。
『何でもないよ。』無理に笑顔を作って顔をあげると彼と目があった。
『菜穂ちゃんって可愛いね。なんか子犬みたい。』そう言って笑う彼の言葉が胸の中に響く。
可愛いなんて初めて言われた。しかも好きな人に。嬉しすぎるーーーー(笑)
思わず顔が赤くなってにやけてしまう。慌てて下を向いたけど梨紗に見られていたなんて気付きもしなかった。幸せな一時はあっという間に過ぎて行く。電車が降りる駅に着いてしまった。
『あっくん。バイバイ』
『ああ。気をつけろよ。バイバイりい。菜穂ちゃん』
彼が向ける笑顔は梨紗だけに向けられたのに私まで嬉しくなった。