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大切なもの―初恋編―
【少年/少女 恋愛小説】

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大切なもの―初恋編―-2

その日は一日嬉しくて幸せだった。放課後になり梨紗と駅まで歩いた。ホームに着くと彼がいた。
帰りも会えるなんて嬉し過ぎる。にやける顔を必死に隠して梨紗と彼と電車に乗る。
たわいもない話をしていると彼が降りる駅に着いてしまった。彼といる時間はあっという間に過ぎちゃうな。
『じゃあ菜穂また月曜日ね。』
『えっ。梨紗降りるの?』
『あっくんとデートして、あっくん家に泊まるから』嬉しそうな梨紗。彼女だもんデートだってするし、彼氏の家に泊まったりもするよね。キスしたり、エッチしたりするんだよね。
『月曜日ね。バイバイ』
やばい泣きそう。ちょうどその時電車が出たおかげで溢れてしまった涙を見られずにすんだ。


初めて好きになったのに、梨紗が彼女じゃ、勝目なんてない。梨紗は1年生の時から彼が好きだったんだもん。ちゃんと祝福してあげなきゃ。
分かってるわかってるけど、やっぱり彼が好きだよ。人を好きになるのがこんなに苦しくて辛いなんて思いもしなかったよ。
私は家に帰っても部屋に籠ったまま泣いていた。大好きな梨紗。梨紗の彼氏が好きな私。諦めるなんてできないよ…。浮かんで来るのは彼の笑顔。
切なくて、苦しくて、心臓の発作よりも辛いよ…。
好きな人と手を繋いでデートしたり、キスしたり、抱き合ったりするのってどんな気持ちになるんだろう?私には想像もつかないくらい幸せでいっぱいなんだろうな……。
そんな事を考えながらいつのまにか眠っちゃった。
気付くと1時を回っていた。おなか空いた。私は階段を降りてリビングに向かう。リビングにはお母さんが作ってくれたおにぎりが置いてあった。おにぎりを1個食べるとお腹は満たされた。最近ご飯の量も前ほどは食べられなくてきた。小さな発作も頻繁におきてるし。私は誰とも付き合えないまま死んじゃうのかな?
そんなのイヤ。でも私はどうする事もできないよ…。誰でもいい訳じゃない。彼じゃないと意味がない。でも彼は梨紗が好きだから。

何もしない週末はあっという間に過ぎた。
ただ家にいるだけの週末。
駅に行くといつもいるはずの梨紗がいない。待ち合わせしてる訳じゃないから居なくてもおかしくはないんだけど、何かあったのかなぁ?
電車に乗り込み窓の景色をボーと眺めていた。次の駅のアナウンスが流れる。今日も会えるといいな。そう思ったけど彼はいなかった。彼に会えない日は憂鬱になる。

改札口をでて、高校までの道を歩いてると、細い路地裏で抱き合ってる恋人が見えた。
朝からよくやるな〜なんて思いながら見ると同じ制服。
梨紗だ…。見間違いなんかじゃない。梨紗は彼と抱き合ってキスをしていた…。急に早くなる心臓 私は二人を見ていられなくて来た道を戻り家に帰った。お母さんは心配してたけど大丈夫だからって言って部屋に入った。涙は止まる事をしらなくてただただ泣き続けた。梨紗から具合悪いの?ってメールが来たけど返す事もできなかった。
私はその日から学校を休み続けた。二人に会うのが辛くて… レポートだけ提出してもらって毎日を家で過ごしてた。秋が過ぎて随分と寒くなって来た。白い息に冷たい風。
毎日来る梨紗からのメールに私は決まって、大丈夫だから心配しないでって返信した。
日に日に弱っていく体。私はあとどれだけ生きられる?


ねぇ。神様。
何で私が好きになった人は大好きな親友の彼氏なんですか?
小さい頃から注射だって発作にだって我慢して頑張って来たのに。なんでご褒美をくれないんですか?

押し潰されそうな未来への不安。
来週は病院に検査に行く。もしも検査結果が悪かったら……。
その時は自分の幸せだけを考えればいい。それが誰かを傷つけたとしても私はかまわない。私が幸せになれればそれでいい。
私はこの時自分の事でいっぱいでこれから待ち受ける悲劇にきずかなかった……。


―続く―


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