決意のマーマレードを抱いて-2
今日はサラの誕生日だ。
そして僕の誕生日でもある。
僕達は毎年この日になると同時に、互いに祝う。
子供の少ないこの村にとってビックイベントだった。
祭りのような盛大な夜。
皆が温かく祝福してくれるこの一時は、まるで僕らが結婚式でもしているかのような錯覚にとらわれる。
それはアイツも満更ではないようで、いくつになっても少し照れくさかった。
だが、今日はそれをすることなく、この村、アイリス村を発たねばならなかった。
2日前、アイツは倒れた。
大きなショックを受けるからと、僕は会わせてもらえなかった。
美しい光沢を帯びた赤茶色の髪は紫色に変わり、額には緑色の刻印のようなアザができていたらしい。両親が声を掛けても返事がなく、息もなかったという。
まず、村一番の医者が呼ばれだが、彼は病名を特定出来なかった。
そのような病状は見た事も聞いた事もなく、医学辞典にも載っていないらしい。
その後、長老が呼ばれ、しばらくして信じ難い言葉を口にした。
サラは呪術にかかったのだと。
そしてその主は決して人間ではなく邪悪な存在なのだと。
その夜、僕は一人、長老の家に呼び出された。
そして全てを聞かされたのだった。
サラの呪いを解くには、光の力を持った魔法使いに頼むか、あるいは呪いの主を倒すしかないという事実。
そこで長老はひとつ間を置いて静かにこう言った。
『呪いの主はおそらく邪神であろう。あの症状からして間違い無い。…じゃが、邪神は飽くまでも神であるからして、倒すのは不可能に限りなく近い。したがって光の者を探すのじゃ…よいな』
邪神という言葉を聞いたのは初めてではない。
この世界には12の神々が存在する。
そのうち最も凶悪で恐ろしいものが邪神だ。
邪神の怒りに触れるという事は単に死を意味するだけでなく、世界に災いをもたらすと言われている。
ただ、なぜサラがその呪いを受けたのか分からない。
アイツは神の怒りに触れるような事は何もしてないはずだ。
その辺りは長老も謎だと言っていたが。
とにかくそんな訳で僕は旅に出る事になった。
光の魔法使いを探すために。