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クレハの大樹。
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クレハの大樹。-3

ヘンリーが目を覚ました時はもう冬の気配が近づいていました。 
「こんなに寝ちゃったんだ。」 
見上げるとドナウドじぃちゃんが暖かく見守っていました。 

「まったく。寝坊すけじゃの。」 
ドナウドは笑いました。 
カッカッカ。 
力強く暖かく。


それからサンサンと雪が降り始めました。 
ヘンリーにとって初めての雪です。 
珍しいその白い物体に触りたくて触りたくてしかたがないようです。 

ヘンリーの額に粉雪がサラサラとかかりました。 

「つめたぁい!」 

ヘンリーはあまりの冷たさに顔を思わず引っ込めました。 

「じぃちゃんは冷たくないの?」

ヘンリーはドナウドじぃちゃんが心配になりました。 
「こんなもの。なんともないわい。カッカッカ。」

元気なじぃちゃん。 
心強い笑い声につられ、ヘンリーも笑いました。

雪は激しさを増すばかりです。 

さすがのじぃちゃんもだんだんと会話が少なくなってきました。 

「ヘンリー。がんばるのじゃぞ!」 

いつもじぃちゃんはヘンリーの心配をしてくれました。 

暖かいドナウドじぃちゃんのおかげで凍えずにいられました。 


そして雪が溶けて、 
また春がやってくる景色となりました。 

ヘンリーは自分の体の変化にすぐにきがつきました。 
体の中がムズムズして我慢ができません。 
じぃちゃんに相談すると。 

神妙な顔つきでドナウドは言いました。 

「ヘンリーや。
聞いておくれ。
わしとはもうすぐお別れの時がやってくる。」

別れがくるなんてヘンリーは想像できませんでした。 
どうして大好きなじぃちゃんと別れなくちゃいけないんだろ? 

ヘンリーは悲しくなりました。 

そして 
二人のむかえた最後の朝がやってきました。 

じぃちゃんの体はもうボロボロです。 

葉っぱには穴もたくさん開いていて、じぃちゃんも大分つかれてしまったようです。 

「ヘンリー。
もう会えなくなるが、これがサヨナラじゃないぞぃ。体は見えなくても、じぃちゃんはこのでっかい空からおまえを見てるでなぁ。」

そういい終わるとドナウドは眠りにつきました。 
疲れからかいびきをたてながら。 

いくらヘンリーが起こしても目を覚ましません。 

そしてヘンリー自身も体の割れそうな痛みが増すばかりでした。 


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