クレハの大樹。-2
〜クレハの大樹〜
昔むかし。
デンマークのクレハという森に大きな大きな大木がありました。
その木は季節とともに生きて笑って元気よく成長しました。
いつのまにか周りのどの木よりも太く大きく成長しました。
夏の涼しい風もあったかいお日さまの光も大好きでした。
空を見上げると大きく青く広がっていました。
もっともっと大きくなっていきました。
秋がくると立派なまん丸の実がたくさん実りました。
風に気持ちよく揺れながら、実たちはワクワクしていました。
秋も深まり、一つ、また一つと実たちは地面へ落ちていきました。
一つ。
また一つ。
最後に残った実の名前はヘンリー。
怖がりで甘えん坊な実でした。
くる日もくる日も、いつまでも木と一緒にいたいとしがみついていました。
いつか他の実と同じように落ちてしまうことを恐がっていました。
ヘンリーを抱き抱えるようにそばにくっついている葉っぱのドナウドはヘンリーに優しく言いました。
「ヘンリー。おまえは一人ぼっちじゃないぞ。
わしもすぐにおまえのそばにまた行くんじゃから。」
ヘンリーにとってドナウドは大好きなおじいちゃんでした。
暗い夜は話し相手になってくれ、冷たい風からも危険な鳥たちからも守ってくれていました。
ヘンリーをやさしく包み込んでくれるドナウドじぃちゃんが大好きでした。
そしてある朝。
ヘンリーはふわふわと地面に舞い降りました。
「ドナウドじぃちゃん。
はやく来てね!」
勇気をだしてヘンリーは地面へとおっこちていきました。
トン。
無事になんとか地面へとたどり着いたヘンリー。
ここには誰一人知り合いはいませんでした。
「さみしいよ〜。寒いよ〜。」
ヘンリーは思わず泣き声をあげながら上を見上げました。
なかなかドナウドじぃちゃんはやってきてくれません。
「ドナウドじぃちゃ〜ん!」
毎日ヘンリーは叫んでいました。
淋しくて淋しくてしかたありません。
ある朝、フワフワと風にのり懐かしい匂いがしました。
「ドナウドじぃちゃんだ。」
ヘンリーにはすぐにそれがドナウドじぃちゃんからの合図であることがわかりました。
フワフワと風に揺られながら一枚の木の葉が舞い降りてきました。
ちょうどヘンリーの真上に覆いかぶさりました。
「ドナウドじぃちゃぁん!」
ヘンリーはうれしくてうれしくて泣きだしました。
「相変わらず泣き虫じゃの。」
ドナウドはやさしくヘンリーを包みました。
ちょうど太陽の匂いのする布団のようで、ヘンリーはとても暖かく幸せな気持ちになりました。
あまりにも気持ちがよかったんで、ヘンリーはウトウトと眠りにつきました。