H.S.D*3*-4
「じゃあ、じゃあ本当に…」
「幽…霊…?」
好美の声があたしの脳を震わせた。脳内で響くその言葉…お互いがそれを理解した時、あたしは歯を食い縛り、好美の腕を引っ張って全力で走っていた。
悲鳴なんて出てこない。喉から出てくるのは、行き場を無くした空気がヒーヒー漏れる音。
こんな状況だけど、あたしは短距離走の素質があるのではと、心の片隅で思った。
息も絶え絶えにあたしたちは校舎を飛び出した。校門の脇に停めておいた自転車のサドルに、好美は迷う事無くまたがった。あたしは、急いで荷台に乗り、好美の肩をギュッと掴む。
ハンドルをきつく握ると、好美はとんでもない速さでペダルを踏み続けた。
…本当に、月の明るい夜だった。