バトンタッチ。-6
入試当日は入試解答速報という催しものを行い、事故採点をみんなでした。
田和の姿はそこにはなかった。
彼の携帯にメールを送る。
「テストおつかれさん!どうだった?」
返事がなかなか返ってこない。
返事が来たのは深夜3時。
「だめだわ。」
短い一文が送られてきた。おれは肩を落とした。
おれらがやってきたことは無駄だったのか。
後悔が募る。
合格発表は一週間後にある。
この一週間、田和は来なかった。
電話もメールも全く返事はない。
重い一週間だった。
3月21日。
合格発表当日。
昨夜は寝れなかった。
胸が苦しかった。
泣いても笑っても今日で全てが決まる。
アイツのこれからが決まる。
決まってしまう。
と思うと合格発表を高校に見に行く足取りも重く辛かった。
でも逃げるわけにはいかないから!
最後までとことん面倒みるのが、うちの学院のモットーだ。
青諒高校に着いた。
人だかりができている。
その表情は涙で溢れていた。
嬉し泣きや悔し泣き。
アイツはどっちの涙を流すのだろうか?
もちろん前者であってほしい。
すぐに後ろ向きな考えを打ち消した。
アイツの受験番号は327。
合格者の一覧を目で追っていく。
311…315…316…319…321…322…324…325…………
あった!!
327。
もう何も考えられず涙が滝のように流れる。
止まらなくていいや。
やった!
やったよ!
胸の鼓動は高鳴り、自分の事以上に嬉しかった。
生きていてよかったと思った。
すぐに携帯に電話する。
お母さんが出た。
田和のお母さんは泣きながら
「ありがとうございました」何度も言ってくれた。
そして田和本人に代わってくれた。
「おう!やったぜ。」
いつものようにクールにしていたいのだろうが、その言葉は明らかに震えていた。
本当によかったな!田和。
「ヒポのおかげだな。」 照れ隠しで彼はそれだけ言い電話を切ってしまった。
バカやろう。
ありがとうを言いたいのはこっちの方だよ。
田和ありがとう!
最初の一年は慌ただしく過ぎて行った。
どれだけアイツらに伝えられたのかはわからない。
だから明日も何かが届くようにがんばっていくしかない。
そうまだ始まったばかりだから。
高校に入り、田和は色々を問題を起こすのだけど、それはまた別の機会に。