「アイラブユーベイベー」-2
カゴに下着とタオルを入れ、紺色のスクール水着に着替える。
統一規格だとDカップにはやはり窮屈で、谷間がクッキリ。横乳がハミ出そうになるから、常に気にしてなきゃいけないのもツライ。あと、オッパイのせいで股布の部分まで引っ張られて、ほんの少し食いこんでしまう。
何が悲しくてこんなヲタク受けしそうなカッコしなきゃいけないんだか。このスクール水着っての、ホント勘弁してほしい。
* * *
なんで高2にもなって水泳が男女合同なの…。
プールサイドに出ると、案の定、うちのバカレシ彰くんがヘラっ、と笑いながらこちらへやってくる。
「うわー、ユウカ、みんなに見せんの勿体ない!」
俺のユウカだってしっかりアピっとかなきゃ、と腰に手を回し、やたらべったり張り付いてくる彰。
「オマエら俺のユウカをヤラシー目で見んじゃねー!」
「アホ彰、恥ずかしいから止めてよ//」
…でも確かにさっきから、向こう側――つまり男子のエリアから視線が絡みついてくる、気がする。
こんな視線、普段は慣れっこなのに、いったん意識しちゃうと、もう頭から離れなくなる。
横乳とお尻の肉、はみ出してないだろうか。
乳首、立っちゃってないだろうか。
なにより、食い込んだ股布。色が変わったりしていないだろうか。
「ほ、ほら準備体操始まるからあっち戻んな、彰っ。」
とりあえず大声を出して平静を保った。
* * *
授業が始まってしまえば、案外平気だった。
背泳ぎだけは、やはり恥ずかしくて仕方なかったけど…。
授業も残すところ15分となったとき、ふと見やると、彰が目を押さえながら先生に一声かけ、更衣室のほうへと戻っていくのが見えた。
大丈夫かな。目になんか入ったんだろうか。
しばらくすると、何事もなかったように戻ってきたから、特に気にすることもなかった。
* * *
「…え?」
ない。ない。
授業が終わってシャワーを浴び、更衣室へ。
かごの中にタオルと一緒に入れたはずの替えの下着が、ないのだ。
ついでに、今まで着ていたのも、なくなっていた。
盗まれた…?
「どしたの?」
タオルを体にまき付けたままカバンをごそごそやっているアタシに、真由が声をかけた。
「下着が、ない。」
「えーーッ?!盗まれたのぉ?!」
嘘、大丈夫?と周りのみんなも声をかけてくれる。
「うん、盗まれた、のかな…。」
それも、嫌なんだけど。アタシの頭の中にはもう一つの嫌なシナリオが描き出されつつあった。