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《魔王のウツワ》
【コメディ 恋愛小説】

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《魔王のウツワ・8》-5

※※※

空手部の部室はその道場内に独立して作られており、外からは中の様子を窺うことは出来ない。
その為、正面から乗り込んだ。靴を脱ぐことなく、道場に上がる。この際、礼儀は勘弁してもらいたい…

「姫野は何処だ?」

いきなりの訪問者に道場内にいた数人の男達の身体が強張った。

「どうした?」

部室が中から開き…まあ、男前の奴が現れた。

「佐久間か?」

男に尋ねた。その時に部室の中にガムテープで縛られた姫野が涙を流しているのが視界に入った。

「姫野ッ!」

全身の血が沸騰する。
俺の声に姫野は顔を上げ、さらに涙を流した。
不幸中の幸いとでも言ったら言いのか、姫野の着衣はあまり乱れておらず、行為が及ぶ前だった様だ。しかし、そんなことは何の慰めにもならない…

「──ッ!」

右前にいた男の胸倉を掴み、引き寄せると思いっきり殴り付けた。

「らあッ!」

今度は左にいた男。
男達に怒り、自分自身に憤りながら殴る。
ようやく、事態を把握した男達が俺を取り囲んだ。
深呼吸…スゥーと血が下がり、頭に冷たくなる。

「…姫野、悪い…目を瞑っててくれ」

姫野が瞼を固く閉ざしたのを確認すると、男達に視線を移す。

1…2…3…4…5…

佐久間を入れて6人か…

「上等だ…」

一人が向かってきた。
間髪入れずにソイツに向けてハイキック。見事、顎に当たり、男は吹き飛んだ。残り…5。

「…う、うあああ!」

引きつった声と共にまた一人。すぐさま足を戻すと、体勢を立て直し、ローキック。
くるぶしより少し上を蹴られた相手はヨタヨタとバランスを崩した。
駆け寄って相手の頭を抱えながら、腹部に膝を一発。倒れ込む相手を蹴り飛ばし、残り…4。

休む暇を与えず、二人が間を詰める。一人の蹴りは躱したが、もう一方の正拳は躱しきれず、頬を殴られた。
頭が多少グラつく…だが…

「こんなものか…」

相手を掴むと、一気に引き寄せ、額をぶつける。
嫌な音が鳴った。相手の鼻が折れたのかもしれない。でも、俺の知ったことではない、残り…3。
続けてもう一人を顎を殴った。脳が揺さぶられ、男は倒れた、残り…2。


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