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《魔王のウツワ》
【コメディ 恋愛小説】

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《魔王のウツワ・7》-3

「あ、あの…怒って…ますか?」

姫野が不安げな表情と声色で尋ねてきた。

「あ、いや…怒ってない…」

黒い感情を無理やり心の奥へ封じ込める。

「すまない…ちょっと他のことでイライラしてて…怖がらせたか?」
「あ…いえ…大丈夫です。私が遅れたのが悪いんですから…」
「いや…姫野は悪くない。それより早く飯を食おうか?」
「は、はい…迎えに来てくれて…ありがとうございます」

姫野はにこりと笑った。

良かった…周りの見方は変わっても、姫野は姫野のままだ…

だが…姫野の笑顔を見ても、心の奥に息づく黒い感情と不安が消えることは無かった…

※※※

一週間も掛からずに、姫野の事は学校中に広まった。たまに、姫野が好きになったという話も耳に入る。
そんなことを聞くと心がざわつく…知らず知らずの間に拳を握っていたりする…

昼休みも姫野は遅れることが多くなった…
何か姫野を遠く感じる…

※※※

「ヒメは今日もなんか?」

今日も姫野は遅い。刻々と焦燥感は募っていく。

「……仕方ないだろ…」

七之丞ではなく、焦る自分に言い聞かせる様に呟いた。

「せやな…今まで地味な女の子がいきなり変わってもうたら、そらモエるわ♪あっ…ちなみに今のモエるは草冠の『萌え』るな♪」
「………」
「…でも、男二人は寂しいなァ…」

七之丞は煙草の煙と共に短く吐き出した。

「…ちょっと姫野を探して来る…」

そう言い残し、屋上を後にした。あのまま屋上にいると心の奥の黒い感情が、また暴れ出しそうだった。

階段を降りた。辺りを見回したが、姫野の姿は無い。

まだ…教室だろうか?
それとも…また…
もしかしたら…他の奴等と…

「…ッ…」

思わず腹を手で押さえる。胃の辺りが重い…

「落ち着け…俺…」

暴れる感情を手懐ける様に、ゆっくりと大きく深呼吸。少しずつ、強引に押さえ付けていく…


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