投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

H.S.D
【学園物 恋愛小説】

H.S.Dの最初へ H.S.D 5 H.S.D 7 H.S.Dの最後へ

H.S.D*2*-1

あの日から一週間…。明日までにクラスの計画書とやらを提出しなければいけないらしい。
大変だ…。
時刻は午後六時を過ぎようとしている。にも拘らず、あたしの目の前にある計画書は真っ白。それどころか、メモ用紙のルーズリーフまで真っ白け。
「でね、さっきも言ったけど、あたしたちのクラスは喫茶店するって夏休み前に決まってんのね…って聞いてる?」
「うん、聞いてる聞いてる」
「あ、そう。じゃあ何から決めようか?」
「んー…と…」
あたしの目の前には、足を組みケータイをイジる矢上が偉そうに座っている。そして、ニッコリ笑いながら
「音羽ちゃんの好きにしていいよ」
「んなこと言われたって…」
あたしは、ブツブツ呟きながら高速ペン回しをおっぱじめる。
さっきからコレの繰り返し。
矢上はずっとケータイをいじりまくっている。カチカチボタンを押してパクンと閉じたと思ったら、すぐにバイブが鳴る。そして、またカチカチとメールを打つ作業に没頭。
こんなんじゃいつまでたっても決まらないっつぅの。
「んじゃさ、どういう雰囲気にしよっか」
「んーとね、音羽ちゃん決めていいよ」
あたしは小さなため息をついた。
さっきから何でもあたし任せ。自分は何も口出ししないで、あたしには責任逃れしているようにしか見えなかった。
「じゃあ…それは後で決めるとして…役割分担とかはどうする?」
あたしはその根性がどうしても許せなかったので、しつこく話題を振る。しかし、奴はあたしに見向きもしないでこう答えた。
「音羽ちゃんの好きなようにしなよ」
……全く。
どうしてあたしばっか頑張ってるんだろう。
本当は今日、あたしは好美たちにカラオケに誘われていた。「隣の席と実行委員なってくれたから奢ってあげる♪」と言って。だけど計画書の提出は明日だし、何も決めてないからということで泣く泣く断ったのに。
…どうやら、コイツと話し合って決めようという考えが甘かったらしい。家で一人でやった方がまだマシだ。すっごいカラオケ行きたかったのに、断ってしまった自分がアホに思える。
「はぁ…」
あたしはまた、短いため息をついた。
その時だった。
「アレ?お前らまだ残ってんの」
驚いて振り向くと、バスケシャツを着て汗だくになっている樋口が扉の前に立っていた。
樋口、樋口貴之は比較的よく話す男子の一人だ。あたしはいい友達だと一方的に思っている。
「樋口っ!何やってんの?」
樋口は流れる汗を拭きながら教室に入ってきて、あたしの机を覗き込んだ。
「動かさねーと体鈍るしねぇ…つぅか何も出来てねぇじゃん!」
真っ白けのペーパー二枚を見て、樋口は目を丸くした。
「ヤベェんじゃねぇの?明日だろ、提出。さっき雅博が言ってたんだけど、提出遅れたら強制的に『休憩所』にさせられるらしいぜ?」
――休憩所。それは経費も手間も必要なく、机と椅子だけが並べられた空間…。
高校最後の文化祭で、そんなつまらないこと絶対にしたくない。
「えー、それは困る。どうしよう…あ、そうだ!」
あたしの頭上で電球が三つ、ピッカーンと点滅しだした。
「樋口もさぁ手伝ってよ!何も決まんなくて困ってたんだ」
「えっ、俺?俺なんかでいいの!?」
「うん、いいの」
「まじかよ…。じゃあ書くもん、ある?」
渋々といった感じで宙を書く真似をした樋口も、いざペンとルーズリーフを渡すと万更でもないように顔を輝かせた。


H.S.Dの最初へ H.S.D 5 H.S.D 7 H.S.Dの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前