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星霜の死と不思議な少女
【少年/少女 恋愛小説】

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星霜の死と不思議な少女-2

その時、教室の隅から小さな声が聞こえた。

「無駄よ。いくら叫んでもね。」

その一言は教室を飛び交う雑然した声とは違って、とてもクリアに僕の耳に届いた。
急いで声のした方へと振り向く。
一人の少女がいた。歳は僕と同じくらいだろうか。
みんなのランドセルを入れる木製ロッカーの上に座っている。
「あなたは、だれ?」僕は恐る恐る声をかけた。(心の奥底では、この現状を打開してくれる救世主であることを祈った)

「私の名前はまゆ。あなたと同じ、まあ近代の心霊主義的に言うなら霊魂。」彼女はさらりと言い返した。

え?僕はその場で固まってしまった。「じゃ、じゃあ!僕は事故で死んだってこと?」


彼女はクスッと笑う。「いいえ、事故による不安定な心身の乖離によって体は病院へ運ばれて、現場には強力な精神的意識体ともいうべき『魂』が残った。近代でいう幽体離脱。」

彼女の言っていることはよくわからなかった。
「いったい……どうすれば元の体に戻れるの?」僕は固唾を飲んでその答えを待った。

「それ、不可能よ。霊魂になった今、自分ではどうするとこも出来ない。事故で負傷した本体の意識が回復するか、昏睡状態なら自然に目覚めるのを待つか。まあ、もしそうなれば立派な近似死体験となるでしょうけどね。」まるでこの状況を楽しむかのように、彼女はぬけぬけと言い放った。

「そんな……。」僕は愕然として声がでなかった。(世界に終わりが訪れて、暗闇が全てを包み込んでいくかのような絶望的な気持ちだった。)

「でも私ね。一つだけ知ってるよ。もとに戻る方法。」
彼女はロッカーからトンと降りて着地する。

「本当!?どうすれば元の体に戻れるのさ?」

「条件があるの、着いてきて。」彼女は少し真剣な顔付きでそう言った。

僕は唾を飲んだ。そしてゆっくりとうなずいた。

僕らは学校を出て、すぐ近くのバス停でバスに乗った。
あれ?「そういえばお金……。」学校の規則でお金は持ってきては行けない事になっていた。

「心配ないわ。だって私達の姿は誰にも、見えてないもの。」

「あ!そうだった。」僕は片手グーで手を叩いて納得する。

「ふふ便利でしょ、うまく応用すれば映画や野球観戦だって見放題ってわけよ。」

……悪いことをしている気がしたが、今は黙って彼女に従うしかない。僕は少し心を落ち着かせて、車窓からの景観に身を馳せた。
バスは国道に出て、中学校を通り過ぎてさらに進むと病院が見えてきた。この病院は、お婆ちゃんが生きていた頃によくお見舞いに訪れた所だ。
しかし評判はけっしていいものではなかった。医療ミスで中年の男性を死亡させたり、手術に失敗して子供が寝たきりになったりだとか問題がかなり起こっている病院だった──。


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