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浪漫飛行
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あやとり-1

影の私が囁く。
いつかお前を嫌いになるよ、と。
その言葉はまるで呪いのように、私を縛り付ける。
「……どうした?」例えば、私を掴むその手が離されてしまったら?
私に嫌気が差して見放したくなってしまったら?
頬に伝う涙を拭われながら、そんな事を考えた。
夜明けがくるのが恐ろしかったあの頃。
自分が日毎にヒトではなくなっていくのが、恐くて恐くてたまらなかった。
次第に人を殺すことに慣れていく自分。
命令に不信感を抱かなくなっていく自分。
どれも私であって、私ではない思考。
「……ねぇ。もし、もし、私から離れたくなったらその時は……私を、殺して。私が貴方を殺してしまう前に」
愛に貪欲な私は、きっと貴方を離しやしない。
狂ったように、貴方を愛し続けてしまうだろうから。
彼の亡骸を抱きながら幸せに満ち溢れた顔をしている自分が脳裏に浮かんで、思わず背筋が寒くなった。
貴方を信じていない訳じゃない。
でも、疑っていないかと言えば嘘になる。
矛盾した気持ちははけ口を求めてさまよい、私の思考を支配していった。
「……わかった。でも、」
彼の言葉がそこで止まる。
私は嫌な予感がして、思わず彼を見上げた。
彼の金色の瞳が、私の紅の瞳と交錯する。
「その時は、俺が自ら命を落とすときだ」
「!」
その瞬間、私を包んでいた影が消えた。
代わりに与えられたのは、暖かな光。
私がずっと渇望し続けていたーー

「だから、君が一人ぼっちになることは、もう二度とないんだよ」



どれだけ望んでも、与えられることはないと思っていた。
こんなにも血にまみれた私を、誰も愛してくれないと。
けれど、貴方は血の海に佇む私を見つけてくれた。



「ありがとう……!」

溢れ出た嗚咽は、彼の唇に吸い込まれていった。


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