《魔王のウツワ・6》-4
「あ、いや…変な意味じゃなくて…い、今は母親もいるし…びしょ濡れだから…風邪ひくといけないし…母親の服なら貸せると思うから…」
って、何を血迷ったことを言ってるんだ、俺は!?バカか!しっかりしろ鬱輪!お前は七之丞以上のバカか!!
「す、すまない…バカなことを…」
慌てて謝罪する。
「い、いえ…厚かましいんですが…わ、私も…雨が弱くなるまで…その…鬱輪さんの家で…あ、雨宿り…させてくれませんか?」
「…えっ!?あ、ああ…もちろんだ」
意外な返答。これは信用されているのだろうか?
ただ…親がいるから安心ということだろうか?
まあ、そんなことは、とりあえずその辺に置いといて…
「す、すぐ近くだから…」
「は、はい…すみません…ありがとうございます…」
二人並んで、一つの傘に入る…まあ、俗に言う…相合い傘なんていう状態だったりして…
「姫野…寒くないか?」
「はい…鬱輪さんが貸してくれた上着が暖かくて…」
俺の両手は買い物袋と傘で塞がっている為、姫野は再びノワールを抱きながら言った。
「本当に…暖かい…」
姫野は静かに呟いた…
※※※
「ただいま、ちょっと頼みがある」
玄関の扉を開くなり、中にいる母親に言った。
「何ぃ〜?」
気怠そうに玄関に来ると目を見開いた。
「えっと…どちら様?」
「は、初めまして…姫野澪と言います…」
「詳しいことは後で話す。とりあえず、姫野に服を貸してやってくれ」
しばらく、パチパチと瞬いたかと思うと…
「まあ…思春期の男女の仲を聞くってのも野暮よね。澪ちゃんだっけ?どうぞ、上がって♪」
そう姫野を促した。
「す、すみません…お邪魔します…」
「えっと、まずお風呂行く?そんなに濡れてちゃ、寒かったでしょ?」
「えっ…あ、あの…そこまでしていただかなくても…」
「いいの♪いいの♪遠慮せずにど〜ぞ〜♪」
半ば強引に姫野を風呂場へ引きずり込む。
俺はもう一度着替え、タオルを持ち、ノワールの身体を拭いた。ノワールはくすぐったそうに身を捩る。
「暴れるな」
「ナァ…」
ノワールを拭き終えると買ってきた食材を冷蔵庫に詰め込む。
さて、夕飯を作るか…