投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

H.S.D
【学園物 恋愛小説】

H.S.Dの最初へ H.S.D 3 H.S.D 5 H.S.Dの最後へ

H.S.D*1*-1

「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダッ!!」
壊れたようにあたしは「ヤダ」を連発する。誰かが「じゃあやらなくていいよ」って言いだすまで、言い続けるつもりだ。
「うっさい!選挙の結果は絶対なのっ。諦めな」
期待したのと全く正反対の理不尽な言葉に、あたしは言い続ける気力を失った。まぁ、理不尽なのは今に始まったことじゃないけど…。
「だって隣の席になったのに…あたしに自殺しろっつぅの!?」
まるでその言葉が合図だったかのように、ガタガタと女子の皆々様があたしの周りにまたまた集った。
「安心して!花は添えてあげるから!」
「安心して!葬式には出席するから!」
「安心して!涙流してあげるから!」
「安心して!自殺する前に止めるから!」
「安心して!何かされたらやっつけるから!」
生きていく自信を失うようなクラスメイトのフォロー。どうせなら、何かされる前に助けてほしい。
実行委員になれば、きっと二人っきりになることがあるに違いない。その時、言葉巧みにお金を要求されたら、さすがのあたしだって渡してしまうかもしれない。こんなに被害者がいるんだもん。矢上の話術は半端じゃないだろう。あたしだって、被害者になるかもしれないじゃん。
「みんなが思ってるほど、あたし強くないって」
「いーや、アンタは強い!誰よりも強い。ボスだよ、ボス!ぃよっ、クラスの最終兵器!!」
パフパフという音と拍手喝采を浴びる。
「いや、嬉しくないし…」
あたしは一歩下がる。
「あのね音羽。考え方を変えてごらんなさいな」
ゆっくり好美が近付き、あたしの肩をがっしりと掴む。
「瑞樹は性格に『多少』問題があるだけで、他はパーフェクトボーイなの」
好美は『多少』に力を込めた。金の亡者のどこが『多少』なのか、あたしには分からない。
「てことはぁ、性格さえ改善しちゃえばウチらも瑞樹も助かるって訳よ!」
どう助かるんだろう?しかし、好美はあたしに口を出させてくれないらしい。一人でペラペラと喋りまくる。
「だからね、音羽が教育して瑞樹の性格直させりゃいいの。お金せがまれる前に直しちゃいなよ」
「なら別にあたしじゃなくてもいいじゃん」
好美は両肩をがっしりと掴みあたしの目を見て言った。
「あんたじゃなきゃダメなの。だってウチら…あの顔とあの甘い声に弱いから…」
好美の言葉にたくさんの頭が「そうそう」と縦に振られている。よーするに、自我が弱いってんでしょ。
「ったく、仕方無いなぁ。分かったよ…。自我が弱いアンタたちが矢上と組んで、またお金巻き上げられんのもイヤだもん。鮎子、実行委員、あたしの名前書いといて」
どっと黄色い歓声が上がる。
鮎子は、オイオイ泣きながら「あ、ありがと…ぉう…」と小さな紙に『天野 音羽』と書き上げた。
「音羽、愛してるぅ!」
「ありがとう神様ぁーっ!」
「マリア様ぁ!!後光が射してらっしゃるわぁっ」
「サランヘヨー!ウォーアイニー!アイラビュー!」
みんなの態度から、きっとあたしはヒーローに違いない、なんて思いながら少しニヤける。が、そんな独り善がりのおバカな考えは好美の一言で吹っ飛んだ。
「あー、良かった♪あんなのと組んだら自殺しちゃう」
…どうやら上手い具合に丸め込まれたらしい。
「ちょっと、どーゆーことかな…?」
「え!?あ…まぁ気にすんなって。困ったことがあったらあたしも手伝うから!ね、音羽?」
「…その言葉忘れないからね」
絶対こき使ってやる。実行委員の権限で絶対働かせてやる。
なんてこと、敢えてここでは言わない。この素晴らしい計画は暫く胸に秘めておくことにする。
「こうなったらね、とことんやっちゃうよ!?文化祭も性格改善も全部成功させてやるっ!!」
あたしがそう宣言するとクラス中からパチパチと握手が沸き上がった。
ぶっちゃけ矢上はどうでもいいけど、文化祭は成功させたいと、あたしは本気で思っていた。


H.S.Dの最初へ H.S.D 3 H.S.D 5 H.S.Dの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前