『―俺が父親を殺した日―』-1
佐藤 大樹、高校2年、17才、今一番したい事、「父親を殺したい……」
「嫌だっ…放してっ!!」
「…由希っ……!!」
僕は机の引き出しに閉まってたカッターを取り出し、部屋をでた。
カッターの刃を出し、ロックを掛け、二階へ走った。
「貴様ぁっ!!父親に向かって何て口聞きやがるっ!!!」
―バシッ!!―
「っ!…」
二階に上がり終えたと同時に妹の由希が倒れ込んだ。
「!?…てめぇ!!」
「何だ…お前か…邪魔だ、消えろ」
―ドッ!―
倒れ込んでいた由希にまるでサッカーボールを蹴るように実の娘を蹴り飛ばした。
「がぁっ!」
「たっく…お前も由希も、"アイツ"もどーしてこうグズなんだよ…」
「!?…止めろって言ってんだろ!!ふざけんなっっ!!」
右手に持っていたカッターを父に向ける、普通では有り得ない光景がこの家では日常茶飯事のように毎日続いた。
「またか……ははっ、ホラ刺してみ?実の父親を刺してみろ?……まっ、お前にそんな根性ないもんな?」
右手が震える。息が荒く、上手く呼吸が出来ない。心臓が高鳴る。
「お兄ちゃん止めて!!」
ふと我に返り妹の顔を見ると涙で顔をクシャクシャに泣いていた。
何度この顔を見たんだろう、切なくて、悲しくて、苦しかった。
もうこんな顔を見たくないって思ったのに……妹にはこんな思いさせたくなかったのに……由希だけには……。
気づいた時には辺りは血でいっぱいになってた。
俺は父親をカッターでメッタ刺しにしていた。
何度も、何度も、
「はっ…はぁっ…はぁっ…はっ……」
顔や手に残る生暖かい感触、血の臭い……。
握っていたカッターが血で染まっていた。
「ぅっ…ひっ…うぅ…」
不意に耳に入って来た鳴き声、振り向くと由希が階段の隅泣いていた。
「はぁっ…はぁ…はぁ…はっ…はぁ…はっ…由希…」
俺は、実の父親を殺した。