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《魔王のウツワ》
【コメディ 恋愛小説】

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《魔王のウツワ・5》-4

※※※

『い、いらっしゃいませ…』

帰り道に寄ったデパートの店員がひきつった笑みを浮かべる。まあ、慣れているので気にしない。
とりあえず、ぶらぶらと歩き回り、プレゼントを考えることにした。

だが、何がいいのか…さっぱり分からない…
あまりに高い物は無理だし…安過ぎるのもな…

おもちゃ売り場。熊のぬいぐるみがだらんと腕を下げて座っていた。

「…いやいや…アレは駄目だろ…」

とにかく、デカい…
小学校1年生ぐらいありそうだ。かさ張るし、姫野だって困るだろう…
それに姫野は子供っぽいのは嫌がりそうだしな……似合うと思うが…

食器売り場。マグカップなんてどうだろう…
その中の一つを手に取った。ピンクのハートがデカデカと描かれている…

「…キツいな…」

姫野に迷惑だし、割れたら最悪だ。
それにいらん誤解も与えそうだ。姫野にではなく、七之丞に…

「他の物は…」

他の物も見たが、どれも似たような物だ…こんなことなら、雑誌の1冊や2冊読んでおけば良かった…

「…ん?」

ふとある物が目に付いた。それを手に取り、値札を確かめる。手頃だが、そんなに安過ぎるわけではない…

「これにするか」

悩んでいても、仕方ない。これなら姫野も喜んでくれそうだ…
目的の物を持ち、レジへと向かった。
周りの視線が気になるが、今は我慢するしかない。
視界の隅で、俺を見ながら警備員が無線でなにやら連絡していたり、擦れ違う客が足早に立ち去ったり、店員が商品を袋に入れる手が不自然に震えてたりいるが…気にしない…気に…しない……気にするな…俺…

※※※

それから3日後の屋上。
姫野から借りたファンタジー小説を読み終え、買った物を持って姫野を待っていた。
幸い、七之丞はまだ来ていない。正直、今日ぐらいは来なくてもいいのだが…

「こんにちは」

扉がようやく開き、姫野が現れた。

「姫野」
「はい?何でしょうか?」

借りていた小説を手渡した。

「ありがとう、面白かった」
「そうですか♪良かった…鬱輪さんが喜んでくれて…」

安堵の表情と共に、姫野は呟く様に言った。

「あ、後…コレも…」
「えっ…?」
「何ていうか…本の礼だ…後…前に怖い目に合わせた謝罪…安物だが…」

買った物を姫野に渡した。花をあしらった髪止め。

「そ、そんな…悪いです…」

受け取った姫野の顔は少し赤くなっている。


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