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《魔王のウツワ》
【コメディ 恋愛小説】

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《魔王のウツワ・4》-6

「う、うつ…わ…さん…?」
「…すまない、姫野…怖がらせて…すまない…大声出して…」

腕の中で姫野が少し震えた。

「…でも、もう大丈夫だ……もう…大声なんて出さない…姫野を傷つける奴もいない…安心してくれ」
「…っ…っ…ぅぅ…ぁあああああ…」

堰を切った様に姫野から涙と泣き声が溢れる…
伝う雫は止めどなく、感情と共に零れ落ちていく…

※※※

「…すみません…ご迷惑を…」

辺りには、夜の帳が降り始めている。姫野が回復するのを待ち、家まで送ってきた。

「いや…俺の方こそ、変なことして、すまなかった…」
「いえ…嬉しかったです…お陰ですごく楽になりました…」

姫野は俯いた。

「姫野…俺はいいのか?」

俺は問い掛けた。

「えっ…?」
「俺は平気なのか?俺も今日の奴等とそう大差はない。お前は…俺にも恐怖を感じているんじゃないのか?」

しばらく、お互いに喋らなかった…

「俺は…俺の目は…姫野を怖がらせているんじゃないのか?」
「…そんなことありません」

姫野が静かに口を開いた…

「…鬱輪さんは優しいです。すごく優しい人です。…確かに始めて会った時は少し怖くて、しばらく物陰から見てました。でも、ノワールを撫でてる鬱輪さんの目は優しくて、そしたら不思議と大丈夫な気がして…
…それに、今日鬱輪さんが大きな声を出したのは私を守ってくれたからだって、私…分かってます」

姫野の言葉はしっかりと響いた。

「私も…鬱輪さんみたいに強くなりたい…」

最後は絞り出す様な声で言った。

「…買い被り過ぎだ…」

俺はそんなに強くない…
俺より、姫野の方が何倍も強い…

「喧嘩しか出来ない俺より、いつも笑っている姫野の方が断然強い」
「鬱輪さん…」
「…そろそろ、家に入った方がいい。まだ、完全に回復したわけじゃないから」
「……はい…今日はありがとうございました」

ペコリと頭を下げ、姫野は扉へと手を掛けた。

「姫野」
「はい?」
「また…明日な」
「はい、また明日」

笑った姫野が扉の向こうへと消えていく。

俺よりも小さな身体に、俺よりも大きなモノを背負った少女を見て思った…

守ってやりたい…

こんな魔王には過ぎた願いかもしれないが…

姫野を…守ってやりたい…


続く…


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