投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

《魔王のウツワ》
【コメディ 恋愛小説】

《魔王のウツワ》の最初へ 《魔王のウツワ》 24 《魔王のウツワ》 26 《魔王のウツワ》の最後へ

《魔王のウツワ・4》-5

「ひ、姫野!?」

思わず、声が裏返る。

「な、何を…」

…気付いた。
俺の服をしっかりと掴んだ姫野の手は、はっきりと分かるくらい震えていた。

「姫野…」

不謹慎だが…目の前で震えている姫野が堪らなく愛しく思える…

「姫野…もう大丈夫だ…」

そう言って、肩に手を置くと、姫野はハッとなり、慌てて俺から離れた。

「す、すみません!!わ、私…何を…」

耳朶まで真っ赤にしながら姫野はあたふたとし始めた。

「ごめんなさい…すみません…」

姫野の震えは止まってきたが、まだ顔色は悪い…

「…少し休める所を探そう」

その言葉に姫野はコクリと頷いた。

「大丈夫か?歩けるか?」

また頷いた。だが、少し辛そうに見える。

姫野の手を握った。
姫野は何も言わず、黙ったまま歩き出した。

※※※

少し歩いたところで小さな公園に出た。
白ペンキの剥れたベンチが、ぽつんと忘れ去られた様に佇んでいる。

「…大丈夫か?」

姫野を座らせ、近くの自販機で買ったお茶を手渡す。
姫野はそれに口をつけ、中身を少しだけ飲んだ。白磁の様な喉元が僅かに動く。

「病院とか行くか?」

姫野はふるふると首を振った。

「…これは…トラウマですから…」
「トラウマ…?」
「はい…私…昔、事件に巻き込まれたことがあるんです…」

姫野は語り始めた…
俺はいい、と言うことも出来ず、ただ黙って姫野の言葉を待っていた…

「私…誘拐…されたことあるんです…」

ユウカイ…誘拐…

あまりに突拍子もない単語で、漢字が出て来るまでに時間が掛かった。

「幼稚園の頃…突発的になものだったらしいんですけど…丸一日、車で連れ去られて…泣けば、殴られて…怒鳴られて…すごく怖い目で睨まれて…」

姫野は俯いて、自分の肩を抱いた。

「怖くて…警察の人が来て…助かった後も…夢とかに出てきて…それ以来…怒鳴り声や、視線が怖くなって…それで…今日も…それが甦ってきて…うっ…怖…くて…っ…」

姫野の声が掠れる…
話の途中で姫野を抱き寄せた。


《魔王のウツワ》の最初へ 《魔王のウツワ》 24 《魔王のウツワ》 26 《魔王のウツワ》の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前