《魔王のウツワ・4》-4
「ちょっ…無視せんといてぇ!た、助けてえな!怖い兄ちゃんがあ!」
Q:追いかけられてるのは誰でしょう?
A:バカ…
「何をやってんだ…」
「知らんわァ…可愛い娘が声掛けてきたと思たら、その彼氏と愉快な仲間達が怒って追いかけてきたんやァ…」
俺の背中に回り込んだ七之丞はそう言っているが…
「ホントに…相手が声を掛けたのか?」
「え…あ、いや、わいから…やったかなァ?…アハハ…」
やっぱり…
「ソイツを出してもらおうか!」
耳、鼻、挙句の果てに唇にもピアスを付けた男が怒鳴る。どうやら噂の彼氏か、もしくは愉快な仲間達の様だ。
「手を出さないなら引き渡す」
俺の眼光に男達は怯んだ。
こんなのでも一応は友達だからな。
「おい…七之丞、お前もあやま……」
振り返ると七之丞が遠くで手を振っていた。
唖然とするしか無かった…
前言撤回…アレは友達じゃない。
「…ふざけんな!テメェのせいで逃げられただろがァ!」
また別の奴が怒鳴る。
その声に姫野がまたビクッとなった。
「あ〜、マジでムカツク!」
「ホント、お前ら邪魔!」
一度は怯んだものの、調子に乗った男達は口々に罵声を発する。
段々と姫野の顔色が悪くなり、震えも大きくなっていく。
「おい…」
「あぁ?うるせえ、うぜえよ」
男達は止まらない。
仕方ない…
「…黙れ」
意図的に低く唸る様に声を出す。
男達の罵声がピタリと止んだ。
「…姫野が怯えてんだろう。これ以上何か喋ってみろ…」
男達の目に恐怖の色が滲む。
「…骨一本で済むと思うなよ」
その声に、ひぃ…っと一人の男が短い悲鳴を上げた。
「…去れ」
一人が後退りした。
ジャリジャリと靴がコンクリートの上で擦れる。音が次第大きくなっていく。
「去れッ!」
男達が揃って回れ右をして逃げていった。
「…行ったぞ。姫野、だいじょ…」
ガシッ…
姫野に向き直った瞬間…
姫野の細い腕が俺の胴をしっかりと掴んでいた。