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ふぉあしー
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ふぉあしー@〜屋上の飛べない天使〜-3

気付くとそこはさっきまでいたマンションの屋上だった。そして私の体を包む暖かいものの正体に気付いた。あの少年が私を抱き締めていたのだ。
「……っ!な、泣きやんだのか?」
少年は私が目を覚ましたことに気が付くと、慌てて私を放して離れた。
少し頬が赤く染まっているような気もする。
「うん…」
「もう自殺しようとは思ってないな?」
「うん…」
「じゃあこれはもう要らないな」
そう言って彼は水色のスニーカーの下から白い便箋を抜き取り、細かく破いて屋上から投げ捨てた。
「あっ……」
細かく千切られた紙切れは蒼穹に美しく舞っていた。
「じゃあ俺はもう行くから」
「あ、あの……」
「何?」
「ありがとう。君って優しいんだね」
「なっ…!べ、別に俺は優しくなんかない。あんたを助けたのも俺の目的のためだ。変なこと言ってないであんたも早くここから降りろよ」
彼ははや足で屋上をあとにした。またもや頬を軽く染めながら。
私も屋上から降りようと思った時、足元に何かが落ちているのに気が付いた。
「あっ、これは…」


翌日
俺は恵と学校に向かっていた。恵に昨日のことについて聞かれたけれど、話していない。
あんな恥ずかしいこと言えるわけないだろ?
しかしこの後俺は、包み隠さず話しておけばよかったと心底後悔することになる。


「おはよっ!駆くん」
前から聞き覚えのある声が聞こえる。確かこの声は…
「まさかあんたは昨日の…」
「そ、昨日君に命を救われた河村咲姫で〜す。君の一個先輩だから『さき先輩』って呼んでね♪」
「ちょっと待て。昨日とは明らかにキャラが違うぞ?それにどうしてここにいる?極めつけは何で俺の名前を知ってるんだ〜!?」
「そんなに一気に質問しないでくれるかな〜?お姉さん、困っちゃう」
「いいから答えろ!」
「もうしょうがないなぁ。キャラはこれが普通なの。昨日は鬱になってたからあんな風だったけど…。何でここにいるかは、君と同じ高校に通っているから。君の名前を知ってるのは…これ!」
「これって言われても俺には見えないから分かんないんだけど…」
「駆の学生証?」
答えたのは俺の横にいた恵だった。
「何で俺の学生証が?」
「多分君が私を抱き締めてくれた時に落としたんだろうね」
「「えっ」」
驚きの声は俺のものなのか、それとも恵のものなのか…
「あの時はドキドキしたなぁ。だって男の子に抱き締められたのなんて初めてだったんだもん。『俺はあんたが死んだら困る』なんて言ってくれるし、それに駆くんって結構タイプだし…」
俺のセリフを抜粋して都合良く作り変えないでくれ。そんな一言すら言えなかった。俺の横から冷たい殺気が漂ってきていたからだ。
「河村先輩、ちょっと失礼します」
「待て、恵!説明させてくれ!」
「駆の口からの説明は信用できないから、身体に聞くことにするわ」
「か、勘弁してくれ〜先輩も誤解を解いてくださいよ〜」
「『咲姫先輩』って呼んでって言ったでしょ?」
「咲姫先輩、お願いします!」
「駆くん、『お友達』と仲良くね」
『お友達』という言葉に反応したのか、恵の殺気が強まる。
しかし俺にはそんなことは気にならなかった。
咲姫先輩のすばらしい笑顔が見られたからだ。目が見えないくせにどうやって見たのか、だって?そんなの俺にも分かんねーよ。眩い光に包まれた先輩の笑顔が脳裏に焼き付けられたんだ。その姿はまさに俺が『視た』天使そのものだった。


あの後、俺が恵にどんな目に遭わされたのかは、ここでは敢えて触れないでおこう。


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