自分の正体-13
「ブラックボックスには三億円強奪事件の何が書いてあるの?」
「 それは…まだ言えない。ただ三億円事件が未解決になってしまった原因となるものが書かれている…はず。」
「はず?片山さんはデシダル化する時に見たんじゃ…」
「ファイル化は原総監の時にしたもの。だから原総監しかブラックボックスがファイル化された事を知らない。杉山総監、上原若菜総監は、ブラックボックスは書類だと思ってる。でもそれを実際にファイル化したのは誰だか不明なの。副総監でさえブラックボックスのメモリーカードの中身は見た事はないって。私達では知り得ない、警察内部の何らかの組織が行ってるって話。その組織も探ろうとしたけど、結局見つけられなかった。ブラックボックスに記載してある三億円強奪事件の真相は不完全なもの。抜けたページに私達が求めているものがあるの。だから何が何でもファイルを開かなきゃならないの。」
「三億円強奪事件の真相の真相か。何かわくわくするね」
「わくわくなんてしないわ。必死よ。」
「そっか。悪い。でもそれを公にしたら、他の警察の黒歴史も表にでちゃうんじゃ?きっとかなりエグい黒歴史が書いてあるんでしょ?警察は大バッシングを受けるだろうし,信頼もがた落ちだよね?」
「ただそれを曝け出して、警察は一から再出発すべきだと私達は思ってる。そしてそれは今じゃなきゃダメなの。彼女が総監の時に。警察を建て直せるのは彼女しかいないから。」
「上原若菜、か。」
「そう。彼女なら日本の警察をしっかりと立ち直らせてくれるはず。高嶋謙也にも太刀打ちできる、そう思ってる。」
「確かに、ね。上原若菜なら新しい警察に生まれ変わる事が出来るかもね。」
「そう。特公の創設者、初代特公部部長の娘さんなら、ね。」
「えっ!?上原若菜の父親って…」
「うん。ただの公安刑事ではないわ?公安の中でもエリート中のエリート。最高のリーダーだった。上原正芳…彼の死にも大きな闇がある。」
そこまでは調べていない広徳にはピンと来ない話ではあった。
「今起きている事は、上原正芳が生きていた頃から繋がってるの。長山一族と木田康介…、全てはそこから繋がってる。上原若菜総監が関わった事件に田口徹、サーガこと佐川健吾も高嶋謙也と繋がってる、そう調べがついてる。」
「上原若菜は自分の父の正体や、その因縁は…」
「知らないと思う。今のところ。ただ今回の件、だいぶ真剣に取り組んでるって事はきっと刑事としてのカンが働いてるのかも知れないわね。彼女の刑事としての資質はもしかしたら父以上だから。」
「そうなんだ…」
広徳は自分が考えている以上にの物事の大きさに押しつぶされそうになった。